WORLD
新たな方法論を提示する作品群
それぞれのフィールドで充実作が目白押しだった2007年。それらをあえて〈ワールド・ミュージック〉と括って流れを見い出そうとするならば、若手アーティストによる新たな方法論の提示に対し、先人たちも新味溢れる作品でそれに呼応していたことだろう。これは個々のレヴェルで世代やエリアを越えた活動が行われていたことの表れであるともいえ、こうした動きがルーツ回帰とミクスチャーへ向かう姿勢を並行させて、各々の作品を興味深いものにしているのだ。
(本橋)
CARLA BRUNI 『No Promises』 Teorema/Naive
5年ぶりとなった今作で、フランスNo.1シンガーのポジションを確固たるものにした彼女。〈気怠い歌声とフォーク・サウンド〉という持ち味が、変わらぬ魅力を放っておりました。サルコジ大統領とのゴシップ報道でもセレブっぷりを発揮してましたね!
(本橋)
ANGELIQUE KIDJO 『Djin Djin』 EMI France
10年以上のキャリアを誇る西アフリカ出身の才女。名匠トニー・ヴィスコンティがプロデュースを手掛けた本作は、アリシア・キーズやジョス・ストーンをゲストに招いてアフリカ伝統音楽を軸にしたハイブリッドなポップスを作り上げ、変わらぬ柔軟ぶりを示してくれた。
(渡辺)
FERNANDO KABUSACKI 『The Flower+The Radio』 Houses/intoxicate
2007年はこれまで一括りにされていた〈アルゼンチン音響派〉が個々に新境地を切り拓いた年だろう。ポスト・ロック、アヴァンギャルド、音響といった区分けを超越するこの奇才は、本作のほか、ROVOとの共演盤でも話題となった。
(本橋)
AKOYA AFROBEAT ENSEMBLE 『P.D.P.(President Dey Pass)』 Afrobomb
多国籍化/多民族化を進めながら層を厚くしてきた2007年のアフロビート界隈で、ズバ抜けていたのはこれだ! 伝統的なスタイルに根差しながら、NY産らしくジャム・バンドやレゲエ好きからも支持される音作りが実に刺激的だった。
(出嶌)
BALKAN BEAT BOX 『Nu Med』 Crammed
シャンテルも一目置くバルカン・ビート・バンドによる本作が起爆剤となり、2007年のミクスチャー・シーンが燃え盛ったといっても過言ではない。地中海周辺の音楽を混ぜ合わせてダンス・ミュージックを作る新しい方法を提示した雛型としても重要盤です。
(本橋)
MONO FONTANA 『Cribas』 Mono Fontana/intoxicate
アルゼンチン音楽界において、もはや重鎮的存在といえる鍵盤奏者が久しぶりに捻り出した2作目。ここで展開されていた〈贅を削ぎ落とした音作り〉は、南米の新世代クリエイターたちの諸作にも多く見受けられたし、この流れはもうひと波来そう!!
(本橋)
ABD AL MALIK 『Gibraltar』 Atomospheriques
ポエトリー・リーディングとシャンソンが生み出したヒップホップのひとつの流れ=スラム・シーンにおいて、移民排斥の流れに強烈な異を唱えた男の話題盤。前年のリリースながら、フランス大衆音楽の新しい動きを垣間見せる作品が日本にも紹介されたことはやはり快挙だろう。
(本橋)
RODRIGO Y GABRIELA 『Rodrigo Y Gabriela』 ATO
個性派ギタリストが多く登場した2007年。なかでも強烈な印象を与えてくれたのがこのメキシコ出身の男女デュオだ。ハード・ロックを呑み込んだ超絶プレイはそっち系のリスナーも魅了した。今年3月には日本盤もリリースされるので、より注目を集めそう!
(相原)
- 前の記事: AMERICAN ROOTS
- 次の記事: WORLD(2)