〈古き良き音〉に留まらない発展性
日本ではいまだにオールド・タイミーな音を愛する傾向が強いようだが、〈ルーツ・ミュージック〉を懐古的な音楽としてのみ捉えるのでもない限り、そこでは常に時代と対峙した音が鳴らされていることを知るべきだ。2007年はロック・サイドからの接近が顕在化したこともあって、メインストリームにおけるカントリーの影響力はさらに拡大。大きな流れを生み出すには至らないものの、ニューオーリンズ・ファンクやブルース方面でも新しい試みは繰り返されていた。
(出嶌)
LUCINDA WILLIAMS 『West』 Lost Highway
オルタナ・カントリー界を代表するシンガー・ソングライターのひとり。ハル・ウィルナーをプロデュースに迎えた4年ぶりとなる本作は、サウンド面においてさらなる深化を遂げている。哀しみを表現することにかけては右に出る者がいない、弧高の存在感を見せつけた。
(野崎)
MIRANDA LAMBERT 『Crazy Ex-Girlfriend』 Columbia Nashville
ソリッドなロック・サウンドにアプローチした〈カントリー界のアヴリル〉は、パワフルな作風で世のカントリー観をさらに更新。過激かつ下品な歌詞もカントリー本来の血の気の多さに通じるんじゃないの?とか思う。ガールズ・ロック好きもぜひ。
(出嶌)
BURNSIDE EXPLORATION 『The Record』 B.C.
RL・バーンサイドの血と意志を受け継ぐ2人組がデビュー。やや元気がなかったブルース界において、ヒル・カントリー・ブルースの伝統を解体/再構築してみせ、ブッ飛んだ個性でシーンに風穴を開けた。〈ヤバさ〉を体現する稀有な存在として心に残った連中だ。
(野崎)
GALACTIC 『From The Corner To The Block』 Anti-/Epitaph
進化し続けるニューオーリンズ・ジャム・ファンクの雄は今作でヒップホップ路線をさらに押し進め、ほぼ全曲にゲストMCを招いてダンス・ミュージックに留まらないメッセージ性をアピール。被災から復興をめざす、かの地を鼓舞する一枚でもあった。
(野崎)
BIG & RICH 『Between Raising Hell And Amazing Grace』 Warner Bros.
ソングライターとして活躍しつつ、古色蒼然たるカントリー観を折衷的なサウンドで突破してきた彼ら。とはいえ、AC/DC曲を歌い、ワイクリフ・ジョンやジョン・レジェンドとも共演とは……カントリー隆盛期にその振り幅を再証明した一枚だ。
(出嶌)
RASCAL FLATTS 『Still Feel Good』 Lyric Street
留まることを知らない快進撃を見せた3人組。引き続きダン・ハフをプロデューサーに迎え、哀愁のメロディーとドラマティックな展開に磨きを掛けた楽曲でわが国のリスナーのハートもガッチリ掴んだ。ジェイミー・フォックスとのデュエットも話題でした。
(野崎)
CARRIE UNDERWOOD 『Carnival Ride』 19/Arista
グラミーの最優秀新人賞を獲得して、ようやく日本でも認知を得た〈ポスト・フェイス・ヒル〉の2作目。カントリーそのものがアメリカン・ポップスと限りなくイコールになった時代だからこそ、ここで披露される歌声は王道のポップスとして聴かれるべきだろう。
(出嶌)