歌そのものへの多面的な回帰
一昨年から続くニーヨ以降の〈メロディー復権〉という流れは継続され、なかでもスターゲイト仕事は目立っていたが、T・ペインやドリームの台頭に象徴される(ラップに近い)フック重視の楽曲も印象的で、新たな潮流となりつつある。一方では、レディシを皮切りにジル・スコット、アンジー・ストーン、キーシャ・コール、そしてアリシア・キーズまで、〈レディー・ソウル〉と呼びたい女性シンガーたちのまっすぐな良作が連続したのも記憶に留めておきたい。
(池谷)
CIARA 『Ciara : The Evolution』 J
サウス~マイアミ・ベース~エレクトロ系のダンサブルな先鋭曲を詰め込んだセカンド・アルバムは、歌のスキルもアップした充実作となった。なかでも白眉はポロウ・ダ・ドンの躍進をさらに印象付けた幻想的なミディアム“Promise”。ここで共演した50セントとの関係もゴシップの的に。
(池谷)
FANTASIA 『Fantasia』 J
ミッシー・エリオットやデンジャらが作り出す冒険的なサウンドを歌い倒すソウル全開の内容で、デビュー時に付きまとった〈アメリカン・アイドル〉出身の優等生イメージを覆した。ミディ・マフィアの手による美曲“When I See You”の成功もまだ記憶に新しいロング・ヒット作だ。
(池谷)
OMARION 『21』 T.U.G./Columbia
アッシャーの座を狙うヤング・スターらしく、ティンバやネプチューンズらのダンサブルな先鋭曲との好相性も見せた2作目。ただ、次のステージへと昇る予感を漂わせていたのは、アンダードッグズ作のバラードで聴ける貫禄を増した歌いっぷりだった。バウ・ワウとのタッグ作も話題に!
(池谷)
PRETTY RICKY 『Late Night Special』 Bluestar/Atlantic
マイアミのシンガー/ラッパー混在4人組による2作目は、より強靭になったハーモニーとラップからタフネスとメロウネスをムンムンと発散。他にない形態ならではの成熟を感じさせ、ヴォーカル・グループが不作な状況下にあってまたしても成功を収めた。
(池谷)
GERALD LEVERT 『In My Songs』 Atlantic
この世を去った稀代のシンガーによる最後のオリジナル・アルバムは、いつものGらしいコッテリと濃厚な歌世界が展開される最高のR&Bアルバムとなった。もう新しい歌声は聴けないが、ここに遺された迸るソウルは、時代を超えてじっくり噛み締めるべきものだ。
(池谷)
JOSS STONE 『Introducing Joss Stone』 Capitol
〈ようやく自分のやりたいことができた〉ということで、3作目にして改めて自己紹介。その中身は、ラファエル・サディークに全面プロデュースを仰いだ瑞々しいソウル集だった。コモンやローリン・ヒルまで引っ張り出した〈19歳の等身大の表現〉の器のデカさたるや。
(池谷)
MACY GRAY 『Big』 Will.I.Am/Geffen
しゃがれ声ソウル・シスターの元祖による4作目は、新たな後ろ盾となったウィル・アイ・アムのサウンドと抜群の相性を見せる快心の仕上がりに。エイミー・ワインハウスにお株を奪われた? いやいや、スモーキーな歌声の深みではメイシーに敵うものじゃない。
(池谷)
MUSIQ SOULCHILD 『Luvanmusiq』 Atlantic
同郷フィリーの制作陣で固めていたこれまでの作品から一転、ニーヨやアンダードッグズなどの曲提供も受けた意欲作。アトランティックへの移籍も影響していたのだろうが……時にラップ的にモタつく歌唱も含め、結局はフィリーらしさと彼らしさが滲み出る好盤だった。
(池谷)
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