HIP HOP
十分に〈生きて〉いたシーン
毎年イキの良いルーキーが登場してくるUSシーンだが、サウス/ミッドウェストは新人以上に中堅~ヴェテランが良作をリリースしてゲームの主導権を握っていた感もある。同じくヴェテランの奮起に後押しされた東海岸もオーヴァーグラウンドへ繋がる地下シーンが盛り上がって爆発寸前……とメインストリームは相変わらず熱かった! なお、安定していたベイエリアを除く西海岸はやや地味だったが、2008年は強烈な新曲をドロップしたスヌープの動きに注目か。
(升本)
JIM JONES 『Hustler's P.O.M.E.』 Jones Family/Koch
〈ボォォリィ~ン!〉なるパンチラインで大ヒットした“We Fly High”の勢いに乗って、前年末から2007年初頭を席巻した一作。ディップセットの勢いを再浮上させるのみならず、他エリアに押され気味だったNYシーンが盛り返す原動力となった意味でも重要だ。
(升本)
NAS 『Hip Hop Is Dead』 Ill Will/Def Jam
実際はヒップホップの未来に寄せる真摯でポジティヴな提言が大半を占めていたりするアルバムなのだが、ショッキングなタイトルを巡る論争はいまもなお続いている。この勇気ある問題提起は、結果的にNYヴェテラン勢の復活を促すことにも繋がった。
(高橋)
YOUNG JEEZY 『The Inspiration』 Corporate Thugz/Def Jam
現行メインストリームのスタンダードを確立したトラップ・スターの威光に、さらなる凄みと輝きを与えた傑作セカンド・アルバム。史上空前の激戦となった2006年の第4四半期、ジェイ・Zに次ぐセールスを叩き出したのは他でもないこの男だった。
(高橋)
MIMS 『Music Is My Savior』 Capitol
USの年間リングトーン・チャートで第2位に輝いた“This Is Why I'm Hot”は、フロリダのブラックアウト・ムーヴメント制作、という点も含めて実に2007年的なヒット曲だった。NYシーンの今後について議論する際の叩き台としてもおもしろいアルバムだ。
(高橋)
TIMBALAND 『Shock Value』 Mosley/Blackground/Interscope
前年の絶好調ぶりをキープし、ビート職人というよりはシーンのフィクサーとしての実力を発揮した化け物盤。フォール・アウト・ボーイやワンリパブリック、シー・ウォンツ・リヴェンジなどハイブリッドなロック勢の台頭までも予見していたのか。
(出嶌)
PAUL WALL 『Get Money, Stay True』 Swisha House/Asylum
H・タウン~テキサス勢も堅調だった2007年。最強のシロッピン・バウンス“Break 'Em Off”など、ドス黒い南部スメルを放つビートにルーズなラップをハメたポールはまたも余裕で全米TOP10ヒットを記録! カミリオネアとの電撃和解も記憶に新しい。
(升本)
RICH BOY 『Rich Boy』 Zone 4/Interscope
人気プロデューサーとなったポロウ・ダ・ドンのレーベル=ゾーン4から登場したルーキーのファースト・アルバム。前年からヒットを続けていた“Throw Some D's”だけでなく、ポロウ節炸裂の“Good Things”や“Boy Looka Here”など佳曲揃いで、有望新人ぶりをアピールしていた。
(升本)
SA-RA CREATIVE PARTNERS 『The Hollywood Recordings』 Babygrande
カニエ傘下でのメジャー・デビュー、という期待どおりの形ではなかったけど、LA地下シーンの至宝たる彼らのアルバムはやはり2007年を語るうえで欠かせない! ポストJ・ディラ的な流れも内包する銀河センスは流石にズバ抜けてるしね。
(出嶌)
WAAJEED 『The War LP』 Bling 47
ファット・キャットの新作『Carte Blanche』と並んで2007年のデトロイト・アンダーグラウンドを代表する一枚だ。第2の故郷=ブルックリンへの思いを託したギャング・スターのリメイク他、壮大なサウンドスケープが広がる漆黒のコズミック・ストリート・ソウル。
(高橋)
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