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特集

T. Rex (Tyrannosaurus Rex)

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2008年01月10日 10:00

更新: 2008年01月10日 17:28

ソース: 『bounce』 294号(2007/12/25)

文/小出 斉


  マーク・ボラン死して、早30年。いまだ人気は衰えず、いや再評価を経て写真集「T. REX 1972 SUKITA」と決定的な2枚組のベスト盤『Greatest Hits』がリリースされた。この写真集は72年に撮影したものである。そう、72年。日本ではT・レックス旋風が吹き荒れていた。意識的に洋楽に接していた当時中学生の私の実感であるが、ローリング・ストーンズも踏ん張り、レッド・ツェッペリンやディープ・パープルなどが攻勢に出てはいたものの、ビートルズは解散、ジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリンが次々と逝ってしまった――そんなロックの世界に、グラム・ロックの看板を背負って登場したT・レックス=マーク・ボランのギンギラギンな輝きは、目にも眩しく、まさに新しいスター然としていた。

 その前年にはBB・キングが初来日。私事で恐縮だが、ほんの端っこをかじっただけのくせに生意気にもブルース・ファン面をしていた筆者は、〈T・レックス? フン!〉てな顔をしていたのだが、ラジオから流れてくる“Get It On”や“Telegram Sam”の気持ち良さに抗しがたいものを感じていた。告白すると、その後に改心して(?)ふたたびロックもフツウに聴き直しはじめた時、真っ先に買ったのがT・レックスのシングル集。で、結局〈ブルースもマーク・ボランのシンプルなブギーも根は同じじゃん!〉と思うようになった。もっと端的に言うと、黒人音楽の本質的なカッコ良さや美味しいところを、まったく黒人っぽくない形で消化&昇華してしまったのがマーク・ボランなのだと気付き、以来尊敬しているのだ。

 大体において黒人音楽に魅了された非黒人シンガー/ミュージシャンは、黒人のように歌い、演奏したがる。そしていわゆる〈クロっぽい〉世界をめざすのだが、ボランの細く、甘く、震える歌声にそんな影は見当たらない。しかしそのビートの快楽は、はっきりと黒人音楽に通じるもの。そう、まさにそれこそがボランのブギーの秘密なのだ、と勝手に確信している。

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