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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2007年12月27日 11:00

更新: 2007年12月27日 16:30

ソース: 『bounce』 294号(2007/12/25)

文/高橋 芳朗

ヒップホップの救世主


  ルーペ・フィアスコが今回のニュー・アルバム『The Cool』から最初に送り出した曲は、簡素なプロモ・クリップが作られてはいるものの別にシングルという位置付けでもない、“Dumb It Down”だった。ここで彼は、みずから主宰する1st&15thプロダクションズのジェムストーンズ(ジェミナイ)とグラハム・バーリスに代弁させる形で、ファースト・アルバム『Food & Liquor』に寄せられた〈ご親切なアドバイス〉を延々と並べたてていく。

「おまえのラップは難しすぎるんだよ。情報量だって多すぎる。地球の気候なんて、俺たちにはどうだっていい話だ。もうちょっとわかりやすく、レヴェルを下げてラップしてくれ。GQ誌の〈Breakout Man Of The Year〉に選ばれたらしいけど、そんなネタは通用しない。ロボットとかスケートボードとかじゃなくて、車についてラップしたり、ビッチ向けの曲を作ったほうがいいぞ。そうすれば、もっとレコードが売れるからな」。

 そしてルーペは、そんなヒステリカルなノイズをよそに、「Pimps see the wings on an underground king」なんていうグッとくるワードプレイを交えながら、高らかにこう言い放つ。「俺は怖いもの知らずで、どこまでもトゥリルで誠実な男。ポケットいっぱいに詰め込まれた詩を人々に供給していくんだ」──正式なファースト・シングルの“Superstar”よりも先に“Dumb It Down”をリリースしたルーペの意図は、新作の全貌があきらかになったいまなら手に取るようにわかる。言ってみれば、それは現行のシーンやマーケティング・セオリーに対するルーペの挑戦状であり、『The Cool』が『Food & Liquor』以上に野心的で冒険心に富んだ〈ガチ〉なアルバムになることの予告だったのだ。

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