COHEED AND CAMBRIA 俺たちはなんだって自由にできるのさ!
エモとプログレを融合し、〈エモグレ〉なるジャンルを確立したコヒード・アンド・カンブリア。メジャー移籍後第1弾となった前作『Good Apollo, I'm Burning Star IV, Volume One:From Fear Throu-gh The Eyes Of Madness』(2006年発表)が全米チャート初登場7位をマークし、話題を呼んだことも記憶に新しいだろう。そんななか、このたび通算4枚目となるニュー・アルバム『No World For Tomorrow』が到着した。彼らは作品を通じて全4章から成る物語を描いており、2002年の初作『The Second Stage Turbine Blade』が第2章、続く2作目『In Keeping Secrets Of Silent Earth:3』が第3章、3作目が第4章の前編、そして今作が第4章の後編にあたる。来るべき次作では第1章に戻るということで、時間軸を歪ませた手法がまるで映画〈スター・ウォーズ〉シリーズを彷彿とさせる、壮大なサーガとなっているのだ。しかし架空の物語を描きながらも、歌詞は単なるファンタジーでは終わらず、現実世界の要素もしっかりと反映されている。
「フィクションとノンフィクションの境界が曖昧なのはこれまでの作品とも共通しているけど、今回のアルバムはそれがいちばん如実に表れていると思う。なぜなら昨年はいろんなことがあったからね」(クラウディオ・サンチェス、ヴォーカル:以下同)。
彼の言う〈いろんなこと〉のひとつが、メンバーの脱退劇。バンドはドラマーとベーシストを失い、活動の継続が危ぶまれていた。しかし奇跡的にベーシストが復帰。そしてサポート・ドラマーにフー・ファイターズのテイラー・ホーキンスを迎え、アルバムのレコーディングに臨んだのである(現在は元デリンジャー・エスケイプ・プランのクリス・ペニーが正式に加入)。
「テイラーは、僕たちの持っていなかった興味深い要素を持ち込んでくれた。音楽へのアプローチの仕方がとてもオープンマインドだったよ」。
そう、困難を乗り越えた彼らは、新たなケミストリーを得ることに成功したのだ。加えて、ギターのみならずピアノやウーリッツァーを用いて作曲したことも功を奏して、あの〈コヒード節〉とも言える旋律がよりドラマティックに強化。もちろんトレードマークの〈オ~オ~〉コーラスやキャッチーなメロディーも健在で、その結果、今作には強力なフックを装備した楽曲がズラリと並んでいる。
「僕たちは日々成長してるんだ。だから新しい要素が加わったことによって、新たなファンにもアプローチできたらいいね」。
さて、まだ先の話ではあるが、次作で〈第1章〉を描いて物語は一度完結する予定である。となると、その後のコヒード・アンド・カンブリアはいったいどうなってしまうのだろうか?
「いろんな選択肢があるよ。いわゆるコンセプトをなくして音楽だけに集中するのだってまったく問題はない。俺たちは今後もなんだって自由にできるのさ」。
物語が終わりに近づこうとも、彼らの進化はまだまだ止まらないのだ。
▼コヒード・アンド・カンブリアの作品を紹介。
- 前の記事: TYPE C:EMO
- 次の記事: CHIODOS