STARS, STRIPES & MELODIES(2)
FAITH HILL
『Fireflies』 Warner Bros.(2005)
ベスト盤も出たばかりだが、この最新オリジナル作を紹介。セレブ路線の反動か、ルーツを再確認した“Mississippi Girl”などで〈普通の田舎娘〉を強調するあたりが逆にセレブっぽい快作だ。エルトン・ジョン仕事で知られるポール・バックマスターのストリングスも女王を優美に支える。
TIM McGRAW
『Let It Go』 Curb(2007)
94年の『Not A Moment Too Soon』以降、No.1街道を驀進するルイジアナの苦労人。この最新作でもエディ・ラビット“Suspicions”(79年)を歌って古参ファンに目配せしつつ、ビッグ・ケニーのペンによる“Last Dollar(Fly Away)”で現代性もしっかりキープ。夫人のフェイス・ヒルとのデュエットも。
TAYLOR SWIFT
『Taylor Swift』 Big Machine(2006)
その名も“Tim McGraw”なる自作曲で注目を集めていた16歳が、満を持して発表した処女アルバム。“Teardrops On My Guitar”など、ティーンらしいラヴソングをリアン・ライムスの影響下にある芯の強い歌声で披露している。共作も含めて全曲を自作した才能も評価されるべき。
BRAD PAISLEY
『5th Gear』 Arista Nashville(2007)
ウェストヴァージニア出身のハンサムが放った5枚目のオリジナル作。キャリー・アンダーウッドとの“Oh Love”をはじめ、MOR風のポップ・バラードも骨太なロック曲も、乾いた歌声を響かせながら自然体でこなしている。なお、妻は女優のキンバリー・ウィリアムズ……お前もか!
DIXIE CHICKS
『Taking The Long Way』 Open Wide/Columbia(2006)
〈反ブッシュ発言〉後の論議で保守層に叩かれまくった3人だが、その地位はもはや不動! この最新作ではリック・ルービンに制作を仰ぎ、ジョン・メイヤーやケブ・モーらのゲストも交えて乾いた叙情性を砂埃に舞わせている。これこそアメリカン・ロックだ。
KEITH URBAN
『Love, Pain & The Whole Crazy Thing』 Capitol(2007)
ニュージーランド出身でナッシュヴィル在住の色男。ダン・ハフ制作でジョン・シャンクスらを作家に起用……という安定感優先な作りだが、後進のサラ・バクストンをカヴァーするなど貪欲な面も覗く。〈ニコール・キッドマンの旦那〉で片付けるには惜しい!
COWBOY TROY
『Black In The Saddle』 Raybaw/Warner Bros.(2007)
ミュージックマフィアの一員で、〈ヒックホップ〉を標榜する黒人ラッパー。フィドルやマンドリンのループに高速フロウが絡む様は、ヒップホップとしても相当に異形だ。こんなヘンテコ(ホメ言葉)なブツを受容できる現代のカントリーは懐が深いと思うね。快作!
THE WRECKERS
『Stand Still, Look Pretty』 Maverick(2006)
ミシェル・ブランチが親友のジェシカ・ハープと組んだデュオの初作で、制作はジョン・シャンクス。日本盤の帯には〈フォーク〉とあるけど、中身はフィドルもバンジョーも躍りまくり! カントリー古典の暴力的な側面をカラリと再現したような“Crazy People”が格好良い。