STARS, STRIPES & MELODIES
カントリーという言葉を聞いて、何を連想するだろう? カウボーイ・ハットにウェスタンブーツ? それは間違いじゃないけど……そもそもカントリー(&ウェスタン)とは、欧州のフォークやケルト音楽が賛美歌などと融合して30年代のアメリカで成立した、移民の国ならではのミクスチャー民謡(?)だった。それが50年代になると、リズム&ブルースやスウィング・ジャズ、ロックンロールなどの黒人音楽を採り入れて、同じ根を持つロカビリーとも並走しながら、民謡からモダンなポップスへと変容していく。60年代には再燃するフォークとも結び付いて、さらに人気を拡大したんだ。現在も日本でイメージされる〈カントリー〉は、だいたいこの時期のものらしい。容易に連想できて、それが必ずしも間違いじゃないからこそ、固定観念は根深いんだね。
でも、カントリーは動いている。80年代に再成長を始めたシーンは、1億枚ものセールスを叩き出したガース・ブルックスや、マドンナやマライア・キャリーをセールス面では超えたシャナイア・トゥエインらカリスマの台頭もあって90年代以降に大爆発。世界的なスターを多数輩出して現在に至る……って感じだね。2000年代に入ってからの顕著な動きとしては、シェリル・クロウやネリーら異ジャンルからのアプローチという点でも注目されているよ。
ただ、それらが日本に紹介される段階になると、古臭いイメージで先入観を抱かれることを恐れてか、ほとんどカントリーとしては紹介されないのが現状だ。いまもTVCMで曲が使われているシャナイアやフェイス・ヒルなんて、カントリー歌手だと知らない人も多いだろう。逆に言えば、カントリーであるがゆえに敬遠されている音楽のなかにも誰もが普通に楽しめるモノは多いはずで……それを紹介しようというのがこのページのテーマなんだ。〈カントリーだけど音はポップ〉とかいう形容がそもそもおかしくて、伝統主義者もロック野郎もセレブ歌手もラッパーも都会者も田舎者もいる。それらすべてをひっくるめたものが現代の〈カントリー〉だってことだね。ここでは近年の代表的な作品を紹介しておこう。
▼カントリーの要素を含む作品。