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特集

THAT'S ENTERTAINMENT(3)

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2007年09月27日 11:00

更新: 2007年09月27日 14:25

ソース: 『bounce』 291号(2007/9/25)

文/高橋 芳朗

「いい音楽を作りたいだけさ」(50セント)

 一方、〈キングコングとテディベアの戦いなんてまるでオハナシにならない〉とでも言いたげな、鬼の形相の50がジャケットにあしらわれた『Curtis』。タイトルはもちろん彼の本名に由来するもので、ここで50は漫画的なところもあった従来のイメージを払拭するかのように防弾ベストを脱ぎ捨て生身の自分を曝け出している。

「このアルバムには今までよりも人間的な感情を与えたかったんだ。ここではデビュー・アルバム『Get Rich Or Die Tryin'』以前の俺の人生を題材にしているから『Curtis』と名付けたっていうのもあるし、子供のような純真さもあるからこのタイトルが説得力を持つと思ったのさ。ちょうど映画の〈バットマン ビギンズ〉みたいな感じだな。〈バットマン ビギンズ〉は〈バットマン〉の1作目よりも後に公開されているけど、内容的にはバットマンの始まりを説明している映画だっただろ?」。

 こうしたコンセプトもさることながら、『Curtis』と過去の50作品との最大の相違点はゲストの人選にある。エミネムやドクター・ドレー、Gユニット勢の参加も当然あるものの、ジャスティン・ティンバーレイク、ティンバランド、メアリーJ・ブライジ、エイコン、ロビン・シック、ニコール・シュルジンジャー(プッシーキャット・ドールズ)など、基本的に身内で統一していたこれまでの方針を覆すだけに留まらず、その大半がシンガーで固められているあたりは非常に興味深い。

「今回はいままでとはまったく違うやり方を採った。以前は自分のクルー以外とはコラボしなかったんだけど、最近は俺が楽しめる音楽を作ってるアーティストに対しては積極的にアプローチしていっしょに曲を作ろうって気持ちになってる。俺には〈キング・コンプレックス〉はないんだ。俺はただいい音楽を作りたいだけなんだよ」。

 それらのコラボのなかでも出色なのがジャスティンとティンバランドをフィーチャーした先行カットの“AYO Technology”。波状に押し寄せるシンセ・サウンドが過剰なまでに緊張感を煽る官能的なバウンス・チューンだ。

「ジャスティンはこれまで俺がコラボしたアーティストにはなかったエッセンスを提供してくれた。彼はスタジオに入ってくるとすぐに自分のパートを作っちゃうんだけど、俺も負けずにヴァースをどんどん書いたらあっという間に曲が完成した。自分と同じぐらい才能のある奴と仕事をするのは凄くエキサイティングだよ」。

 こうした客演陣の顔ぶれからもゴージャスな印象を受ける『Curtis』だが、みずからの出自を再確認する内容だけあって随所では原点回帰とも受け取れる楽曲を聴くことができる。アーバン業界のセレブ・カップルを名指しで挙げていくと共に〈奴らがいちゃついているときも俺はハッスルしてるんだ〉と豪語する“Fully Loaded Clip”、“Piggy Bank”のプロモ・クリップで揶揄したキャシディのビートをあっけらかんとジャックする“I Get Money”などでのやり口はまさにデビュー以前の50を思い起こさせるものだ。

「至近距離から銃弾を喰らっても生き残ったんだ。神様が俺を生かしてくれたのには理由があるんだよ。ここまでくるとどんなことでも可能なように感じるんだ。俺は何百万ドルって金を稼いでるし、安息の場も見つけたけど、音楽を愛しているからこそ曲を作っている。必要に迫られて曲を作ってるわけじゃないんだ。『Curtis』を通じて皆に感じてほしいのはそういうことさ」。

 それにしても、ジミー・アイオヴィンへのディスを含む“Smile(I'm Leaving)”(日本盤にのみ収録)にてインタースコープとの訣別を事実上表明した50は、いったいこの後にどんな構想を描いているというのだろう? タイトルも意味深な次作『Before I Self Destract』がいまから待ち遠しい。

▼『Curtis』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

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