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ROLL WITH IT アンディのルーツを指し示すロック作品

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2007年09月20日 09:00

更新: 2007年09月20日 16:45

ソース: 『bounce』 290号(2007/8/25)

文/出嶌 孝次

 番長のルーツといえば、リミックス歴もあるスロッビング・グリッスルやサイキックTV、23スキドゥーなど、ゴス~インダストリアル系も含めた広義のニューウェイヴ作品、あるいはクラッシュやPILなどのパンク~ポスト・パンク勢を挙げておけば収まりもいいのだろうが、近年のTLSサウンドにそうした肌合いは希薄。ただ、今回の『Wrong Meetings』は触れ込みどおりの50'sテイスト全開というわけでもなく、ロカビリー風味も以前“Sex Beat”を取り上げていたガン・クラブのように比較的モダンなサイコビリー勢を経由したもののようだ。逆に番長のモッタリした歌声から導き出されるのは、エンタメ転向後のエルヴィス・プレスリーだったりする(そういえば“Suspicious Minds”はプライマルのアレのネタだ)。そんな拙い歌唱に聴き惚れていると、ロックンロールからビザールな知性を取り出した爬虫類声のルー・リードに思い至るのだ。で、ヴェルヴェッツ風味に英国的な退廃美を加えて生まれたジーザス&メリー・チェイン……番長の歌に似すぎじゃないか(逆だけど)。ついでに言うと、『Wrong Meetings』に溢れるメランコリックなメロディーからそのジザメリやマイブラを思い出す人も多いはず。筆者的にはDisc-1のアタマ2曲が『The Stone Roses』のアタマ2曲に聴こえてビックリした。そのように拙くも艶っぽい歌声やバタバタした演奏を聴くと、今回の番長は生身で勝負しているようだ。本人が嫌悪しそうな時代の雰囲気が無意識に出ているのもその表れだろう。そんなフルチン番長を前に、〈今回も時流を読んで~〉とか評するのは流石に盲目的だよ。『Wrong Meetings』は神格化とは無縁に響いてくる、最高にヘボくて愛らしく、カッコいい作品なのだからして。


エルヴィス・プレスリーのベスト盤『The King』(RCA)

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