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特集

Andrew Weatherall(4)

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2007年09月20日 09:00

更新: 2007年09月20日 16:45

ソース: 『bounce』 290号(2007/8/25)

文/石田 靖博

変容の果ての原点回帰

 移籍後初のミニ・アルバム『A Bag Of Blue Sparks』、アルバム『Stay Down』(共に98年)と、潜水服をモチーフとするジャケが象徴するように、TLSは深海エレクトロ路線に突入した。しかし続く『A Virus With Shoes』(99年)においてはそのテイストをキープしつつ、ビートと音の感触を生っぽく変化させたTLS流スモーキー・ヒップホップを披露。前年に同じくワープから『Music Has The Right To Children』を発表したボーズ・オブ・カナダらと共にエレクトロニカとしても高い評価を受けた。が、そこでまた方向転換するのが彼の真骨頂、2000年の次作『Tiny Reminders』においてはBPMを上げた高速エレクトロ路線を披露し、ウィラロボスらが参加したそのリミックス盤『Further Reminders』をもって深海路線を終了する。

 それと前後して新たな拠点となるレーベル=ロッターズ・ゴルフ・クラブを立ち上げたウェザーオールは、彼とテニスウッドの変名による家内制手工業的エレクトロをリリースしていく。が、そこにももはや満足できなくなったウェザーオールは、かつて純粋にリスナーとしての喜びを見い出していたルーツへと回帰し、カントリーやロカビリーをプレイするパーティー〈From The Double Gone Chapel〉をスタートする。2004年に登場した同名アルバムでは、テニスウッドがギターやベースをプレイし、ウェザーオール自身が歌を担当するという古典的なロックンロール・サウンドへと転向……彼の変容に慣れた人々も流石に唖然としただろう。ただ、この動きはクラブ・シーンのロック回帰を見据えていたものだと言えなくもない。2007年には暗黒ゴシックの後継者たるイヴァン・スマッグとのパーティー〈Wrong Meeting〉と同名のアルバムを2枚連続でリリース(日本盤は2枚組の『Wrong Meetings』として登場)するなど、現在の彼はダークなロック道を突き進んでいる真っ最中だ。このように予想不能な危うさも孕みつつ、ウェザーオールの活動には首尾一貫した美意識と不器用な誠実さがある。周囲に影響を与え続ける彼が20年に渡って発揮してきた才能の本質はその部分にあるのではないだろうか。

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