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特集

Andrew Weatherall(3)

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2007年09月20日 09:00

更新: 2007年09月20日 16:45

ソース: 『bounce』 290号(2007/8/25)

文/石田 靖博

シーンに背を向けるアティテュード

 ボーイズ・オウンを離れたウェザーオールは、当時人気だったプログレッシヴ・ハウス・ユニットのアルーフと合体してセイバーズ・オブ・パラダイスとして活動を開始、同名のレーベルも設立する。レーベルの第1弾からしていきなりスロッビング・グリッスル“United”のカヴァー(92年)であることが意思表示かのように、セイバーズのサウンドは当時のテクノ・ブームを回避したようなダークでゴシックな雰囲気溢れるものであった。特に“Smokebelch II”(93年)は〈セカンド・サマー・オブ・ラヴ〉の終焉を告げるレクイエムのような美しさで、デヴィッド・ホルムズによる傑作リミックスも相まってアンセム化している。94年の『Haunted Dancehall』ではダブ要素を強めたブレイクビーツ路線へと転換し、そこでリミキサーに起用したポーティスヘッドと共にいわゆるトリップ・ホップの呼び水的な傑作となった。一方で、ウェザーオールの彼女であるニナ・ウォルシュが主宰する姉妹レーベル=セイブレッツも93年にスタート。人気とシーンへの影響力という両面で頂点を極めたセイバーズ帝国の黄金期であった。しかしそれも束の間、ニナとの破局によって帝国は崩壊……レーベルもユニットも解体したウェザーオールは、ふたたび独りで地下へ潜行していったのだ。

 94年に新レーベルのエミッションズ・オーディオ・アウトプットを立ち上げていたウェザーオールは、セイバーズ周辺のエンジニアだったキース・テニスウッドをパートナーにトゥー・ローン・スウォーズメン(以下TLS)を結成している。TLSにかつてのセイバーズのような陰鬱さはなく、ウェザーオールの基本姿勢である〈暗さ〉はそのままに、辛うじて陽の光が届く薄明るい深海を静かに潜行するような感触がサウンドの基調となっていく。そんなTLSの評価を決定付けたのは、96年の12インチ『The Tenth Mission』に収録された“Rico's Helly”だろう。浮遊するウワモノ、暖かな感触のウッドベース、カッチリとしたリズムのハウス・チューンとなったこの曲は、後のUKディープ・ハウスに多大な影響を与えた。以降のアルバムも(4つ打ちやブレイクビーツという違いこそあれ)基本的には同じようなムードの漂う作風を推進していくが、エレクトロやドラムンベースを採り入れた『Stockwell Steppas』(97年)を最後にエミッションズの活動を休止。TLSはワープに移籍して第2章をスタートすることになった。

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