ON THE CORNER(2)
できるだけ強力なものにした
そんな重要な意味を持つ『From The Corner To The Block』はタイトルそのものがコンセプトになっていて、MCたちには全員〈コーナー〉、つまり〈街角〉を共通のテーマにしてリリックを書いてもらったという。
「ニューオーリンズのさまざまな街角について書かれた本からアイデアを得たのさ。MCたちには〈街角〉や〈街角にいる人たち〉〈街角で起こった出来事〉などについて書いてもらおうと思った。何人かは以前にいっしょにプレイをしたり、前から面識があったアーティストなんだけど、今回はとにかく自分たちが敬愛していて、おもしろい要素を持ち込んでくれる人に参加してほしかったんだ。まずはやりたい人を挙げて〈夢のリスト〉を作ってみたんだけど、ほとんどの人が引き受けてくれたよ。最初に俺たちの間で楽曲の骨子をレコーディングした。形になっているものも、そうでないものもあったけどね。それらをMCに聴かせて、ラップを貰ってから、それをまた作り込んで磨き上げて……できるだけ強力なものにしようとしたんだ」。
そうやって選ばれたドリーム・チームの顔ぶれは実に豪華だ。アルバムの幕開けを威勢良く飾るリリックス・ボーンをはじめ、ギフト・オブ・ギャブ(ブラッカリシャス)やヴァーサタイル(ライフセイヴァズ)といったクアナム勢から、ブーツ・ライリー(クープ)やレディバグ・メッカといった実力者、ユビキティに所属するオメガ・ワッツとシンガーのニーノ・モスケラ、さらにはミスター・リフのような地下世界の人気者までもがマイクを握っている。バンドの新スタジオが現在サンフランシスコにあることもあって、全体のトーンはコンシャスな西海岸アンダーグラウンド寄りだが、そこに異種のおもしろみと起伏をもたらしているのが、ニューオーリンズ勢との合体だろう。なかでも、接点の見えにくかったジュヴィナイルが、ソウル・レベルズによるバリバリのブラスに乗せてコクのあるフロウを聴かせる表題曲には驚く人も多いかもしれない。
「ジュヴィナイルがTV番組〈Jimmy Kimmel Show〉でパフォーマンスをする時に、バック・バンドをやってくれないかという依頼を貰ったんだ。彼は凄くクールで、収録の合間もいっしょに時間を過ごすことができた。レコーディング終盤でやっと彼に参加の承諾を貰えたんだけど、あの共演が効いたんだと思うよ。彼がラップを入れた後に、ソウル・レベルズがホーン・セクションで貢献してくれてフックが出来た。それを作り込んでいくうちに曲名が気に入って、最終的にアルバム・タイトルにしたんだ」。
▼『From The Corner To The Block』に参加したニューオーリンズ勢の作品を紹介。
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