2 YEARS AFTER...
昨年の特集から1年、ニューオーリンズ音楽はどうなってる?
もう安易な前置きは必要ないだろう。ニューオーリンズでも当然のように季節は巡り、悲劇から2度目の8月が過ぎようとしている。思い起こせば昨年のいまごろは、エルヴィス・コステロとアラン・トゥーサンのコラボやそれに伴っての来日、トゥーサンの参加した中島美嘉の楽曲リリースなど、ずいぶん賑やかな話題が続き、そうした作品や豪華なチャリティー・アルバムなどをきっかけに、かの地が生み出してきた素晴らしい音楽財産の存在を改めて思い返した人、あるいはニューオーリンズの音楽に初めて出会ったという人も多かっただろう。その根源となったハリケーンは少しも喜ばしいものではないが、皮肉にもニューオーリンズの音楽について語られ、親しまれる機会が増えたことは不幸中の幸いだったのかもしれない。
しかしながら、そういうお祭り的な状況で過去の遺産ばかりが尊ばれるのではなく、いろいろな地元の音楽が普通に出てきては楽しまれるような状況こそが、本来の健全な姿に違いないだろう。このたびの企画は、bounceが昨年3号連続で特集して以降にリリースされた、より新しいニューオーリンズ音楽周辺のタイトルに焦点を当てたものだ。
ニューオーリンズは遺跡ではない。いま、そこで鳴らされている音楽、そこから新しく生まれてくる音楽がグリグリと蠢きながら過去と未来を普通に繋いでいる姿があってこそ、本物のシーンと呼べるのだと思う。そうなる日を願いながら、素晴らしく格好良い音楽の数々に耳を傾けてみようじゃないか。
▼文中に登場した作品を紹介