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特集

BOYS NIGHT OUT 俺らはただ、楽しくてクールなサウンドを演奏するだけさ!

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2007年07月05日 14:00

更新: 2008年05月20日 12:10

ソース: 『bounce』 288号(2007/6/25)

文/粟野 竜二


 カナダ出身のボーイズ・ナイト・アウトは不思議なバンドだ。2003年のファースト・アルバム『Make Youself Sick』ではメロディック・パンクとニュー・スクール・ハードコア、そしてスクリーモを絶妙にミックスし、キャッチーなシンガロングの後に突如スクリームを挿入するなど、意表を突く曲展開で一躍注目を集めた。続く2005年のセカンド・アルバム『Trainwreck』は、前作から一変してダークな雰囲気を打ち出し、複雑な構成でプログレッシヴ・ロックの要素を強く感じさせる作品だった。そしてこのたびリリースされるサード・アルバム『Boys Night Out』は、成熟したメロディーがオトナの雰囲気を感じさせ、過去2作のどちらとも違う色合いになっている。メンバー・チェンジが多いバンドなのでその影響もあるかもしれないが、それにしたってこの振り幅の大きさには驚かされる。

「前とは違うことをやろうとか、〈こんなタイプの曲を作ろう〉って特に意識しているわけではないんだ。まず集まって曲を書きはじめて、良さそうなものが出てくればそのまま進める。演奏していて楽しい、かつクールな曲だったらやるだけさ」(ジェフ・デイヴィス、ギター:以下同)。

 今作に収録されている楽曲は、リフやリズムの組み立て方が一風変わっていて、曲の構成もいわゆる〈Aメロ→Bメロ→サビ〉というフォーマットに則っていないものが多い。しかし難解な印象は受けず、メロディーには一本筋がとおっていて、確実に聴き手の感情に訴えるものに仕上がっている。メンバーの音楽の好みは「カントリーやヒップホップを好んで聴いてるヤツもいれば、コンヴァージやペドロ・ザ・ライオン好きもいる」といった具合にバラバラで、そういったところもこの一筋縄ではいかないサウンドを生み出す要因なのかもしれない。〈エモグレ〉の代表選手であり、いっしょにツアーをしたこともあるコヒード・アンド・カンブリアについて質問したところ、次のような答えが返ってきた。

「俺たちはどちらもプログレからの影響を受けているけど、彼らのほうがその傾向が強いかもしれないね」。

 緻密に物語を作り上げていくコヒードと違い、ボーイズ・ナイト・アウトに対して〈プログレッシヴ〉と言う場合、それはジャンルとしてのプログレではなく、文字どおりの進化/成長を指す意味合いになる。計算ずくの変化ではなく、自分たちから湧き出てくる自然な進化なのだ。

「俺たちにとっては演奏していて楽しいか、それから自分たちがその音楽と繋がることができるかどうかが大事なんだ。ホントにそれだけなんだよ」。

 ボーイズ・ナイト・アウトのサウンドには、〈エモグレ〉よりも〈天然進化系エモ〉という呼び名を与えたい。

▼ボーイズ・ナイト・アウトのアルバムを紹介。


2003年作『Make Youself Sick』(Ferret)

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