JUSTICE(2)
2007年のポップ・ミュージック
ダフト・パンク直系のタフなビート・マナーに、アグレッシヴなカットアップ。そして、彼らの代名詞にもなった〈ディストーション・ディスコ〉と呼ばれるノイジーでパンキッシュな音処理。多彩なアイデアが1曲に盛り込まれており、まるで近未来のサーガを思わせるスケールの大きな世界観のなかで、伸び伸びとトラックが躍動している。
「大きなテーマや聡明なコンセプトがあったわけじゃないんだ。ただ、すべての曲に関連性があるように、1曲に少なくとも2つから3つのパートが組み込まれているようにしたかった。そう、僕らは対極に位置する雰囲気やムードを生み出す〈ディスコ・オペラ〉を作りたかったんだよ。そして1曲のなかでもいろんなフィーリングを同時に味わってもらえるようにしたかった。僕たちが好きなのはメタリカやパンテラのような音楽からラヴソングやロマンティックな音楽まで。それと同時にダンス・ミュージックも好きなんだ。だから自分たちが作る音楽もひとつのスタイルにこだわることなく、やりたいことを何でもやるんだ」。
また、1曲が3分から4分という非常にコンパクトな形にトラックがまとめられていることもとても重要だと彼らは語る。追ってリリースされるシミアン・モバイル・ディスコの新作にも言えることだが、これはダンス・ミュージックを〈新しい音楽〉や〈進化を体現する音楽〉という特別な枠組から解放し、その他のポップ・ミュージックとまったく並列で聴いてきた若い世代ゆえの感覚ではなかろうか。
「7分の曲を僕は座って聴くことなんてできないし、自分たち自身でも最初から最後までちゃんと聴ける曲を作りたかったんだよ。だから曲を短くするための編集にはかなりの労力を費やした。確かにこれがエレクトロニック・ミュージックだって自覚はあるよ。でも、願わくば……いや、僕たちに言わせればね、これは2007年のポップ・ミュージックなのさ!」。
バロック調のオープニング“Genesis”や“Valentime”、さらに聖歌隊をフィーチャーしたリード・シングル“D.A.N.C.E.”など、アルバムにはクラシックやオペラの要素が数多く散りばめられている。『†』というタイトルを含め、作品の宗教的な影響について尋ねると、彼はそれを認めながら次のように答えてくれた。
「ああ、宗教的なニュアンスが込められているよ。でも、それは神のみぞ知るところさ(笑)。ちなみにこのタイトルは十字架じゃないんだ。好きな呼び方をすればいい。十字架のシンボルだけど、同時にただのマークなのさ。クラシックやオペラの要素を入れるのは、それらにシンプルで強い感情がこもっているから。今作では聴く人たちの感情を刺激したかったし、そのためには言葉が必要だった。それでオペラの要素を導入して、歌詞を入れたんだ」。
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