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FLIPPIN' BACK!!(2)

他人のカネを使うほうが気楽だ

 結果として、フリップはアサイラム/ワーナーと契約。ゴタゴタの鬱憤を晴らすような(?)2枚組36曲(輸入盤の初回限定のみ。日本盤はボーナス・トラックを含む1枚21曲)という盛りだくさんな内容で仕切り直した『I Need Mine』がようやく陽の目を見ることになった。ビジネス巧者の彼のこと、レーベル移籍劇もまた器用にパブリシティーとして活用?

「いまだから言えるけど、渦中にいた頃はそりゃあフラストレーションだらけだったよ。だけど今回こういうことがあったおかげで、また新人としてイチからやり直そうっていうハングリーな気持ちを取り戻せた。ソニーとのことについてはアルバム中で触れてる曲もあるけどな」。

 離脱の理由は〈クリエイティヴ・コントロール〉を巡る確執だったという。ミックステープで名を上げ、すべてを自分の思いどおりにできるインディー畑ですでにミリオン単位の儲けを手に入れた彼にとって、これほど窮屈なことはなかっただろう。ただ、前作『U Gotta Feel Me』からはリアをフィーチャーした“Sunshine”がいかにもメジャーらしいキャッチーな曲調で大ヒットしたし、その追い風とさらに手に入れたであろう資金をテコに、今作を自主リリースするのはお手の物だったのではなかろうか。

「自分で出すノウハウもあるし、儲けにも大差ないかもしれないけど、自分のカネを使うよりも他人のカネを使うほうが気が楽だからな(笑)。アルバムを作って、プロモ・クリップを撮って、マーケティングして……っていう一連のプロセスにはかなりカネがかかるんだ。メジャーだとそれぞれの担当が手分けしてその作業に集中するから、俺はアーティストでいられる。自分でやるとなるといろいろ大変だしよ」。

 コラボレート陣にはカミリオネア、マイク・ジョーンズ、Z・ロウ、MJG、ジム・ジョーンズ、スカッド・アップ、ライフ・ジェニングス、マイア、ネイト・ドッグ……と間違いのないラインアップ。確かにここまでの豪華さとヴォリュームはやはりメジャーならでは、と納得せざるを得ない内容だ。

「アルバムのほとんどを差し替えたよ。ソニー盤は『U Gotta Feel Me』の頃に作った曲ばかりだったし。俺はアルバム制作中であろうとなかろうといつもレコーディングしてるから、曲のストックならいくらでもあるんだ。PCには未発表の曲が250くらい入ってるよ。ミックステープに使えるようなのも300くらいある。コンピやサントラ、TVゲーム……使い道はいくらでもあるしね。それから36曲すべてに俺が監督したプロモ・クリップを作るつもりだ。DVDとかYouTubeでも発表していく予定だよ」。

▼『I Need Mine』に参加したH・タウン勢の作品を一部紹介。

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2007年05月10日 11:00

更新: 2007年05月10日 17:18

ソース: 『bounce』 286号(2007/4/25)

文/渡辺 深雪

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