WHO'S THE BOSS? : 1970-(2)
時代に即してスケールアップした存在感
そのようにヒット・スケールの大小という見地からすれば、これといったビッグ・ヒットを出せなくなった76年から78年にかけては彼女がスランプに陥っていた時期のようにも映る。実際には、ヒットしたか云々は作品そのものの音楽的な評価とはまるで裏腹な部分もあるので、短絡的にスランプ期と断定してしまうのも問題含みなのだが、79年にシックのナイル・ロジャース&バーナード・エドワーズという画期的な人選によりレコーディングした“Upside Down”の記録的なヒット(ソウル/ポップ両チャートで4週連続1位。現時点における彼女最大のヒット)を思うと、鮮烈な〈次の一手〉を考えてきた彼女(とそのスタッフ)がこのタイミングで何かから抜け出せたであろうことは確実と思う。ともあれ、80年代を駆け抜ける彼女の動力源が“Upside Down”にあったことは間違いなく、ここでの制作スタンスがそのままダイアナ流のアルティメイト・ポップ増発の温床となっていく。
推進力を飛躍的に高めたダイアナは81年にライオネル・リッチーと共演した“Endless Love”をミリオン・セラー(ソウル・チャートで7週、ポップ・チャートでは9週連続で首位)にしたのを最後に、モータウンからRCA(北米以外はEMI)へと移籍を果たし、マイケル・ジャクソンにプロデュースを委ねた“Muscles”(82年)、ダリル・ホールがプロデュース/ジョン・ロビーがトラックメイクという仰天コラボによる“Swept Away”(84年)、ビー・ジーズのセンスとダイアナの魅力が柔らかく衝突した“Chain Reaction”(85年)など、意欲的な作品を次から次へと誕生させている。
ちなみに、〈USA For Africa〉による“We Are The World”に参加してその存在感を強烈に印象付けたのはそんな85年のことで、ノルウェーで船舶会社を経営する富豪のアーン・ネスとの再婚報道が世間を驚かせたのが86年と、そんなトピックやらニュースやらが、80年代も相変わらず彼女の周辺に少なくなかったことは言うまでもない。
ダイアナ・ロス主演映画のDVD「ウィズ」(ユニバーサル・ピクチャーズ)。リチャード・プライアーやマイケル・ジャクソンも出演!
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