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!!! 他のバンドといっしょにされたくないね!

 いくつかのパンク・バンドがひとつになって生まれた!!!は、2000年に(マーズ・ヴォルタのオマーも関わるレーベル)GSLよりファースト・アルバム『!!!』、2003年にはアメリカ国内のみではあるがタッチ&ゴーよりセカンド・アルバム『Louden Up Now』を発表してきた。そしてこのたびリリースされたばかりのニュー・アルバム『Myth Takes』は、(前作でも本国以外で契約していた)ワープと世界契約を締結。その理由はというと……。

「(ワープのオーナーである)スティーヴ・ベケットは俺のヒーローのひとりだ。自分のやり方をまっとうしているし、お金よりも前にハートを持った人間だしね。それでいてビジネスとしても成功させている」(ニック・オファー、ヴォーカル:以下同)。

  この世界契約は、!!!がアメリカのインディー・バンドとしてのメンタリティーを突き詰めていく過程でより見通しの良さを求めた結果であり、〈人ありき〉のもの。もちろん、彼らの〈アメリカのインディー・バンド〉という根源が変わることはない。ただ同時に、彼らがNYを拠点とする世界のダンス・バンドになった瞬間なのだ。今作はただのディスコ・パンクとは一線を画す、世界を揺らすことのできる強靭かつ自在なグルーヴを持ったアルバムなのだから。

「自分たちではそういう枠(=一般的に言われるディスコ・パンク)にハマッてるつもりもないし、他のバンドとは違うと思っているよ。そのことは表現していきたいし、伝えたいことだね」。

 彼らの進化はサウンド面だけではなく、歌詞の内容にも表れている。

「(前作の歌詞の内容について)自分の意見を押し付けすぎているという反応もあった。それで俺も考えたんだよ、〈俺が歌詞で言ってたことは、もしかしたら他のメンバーの意見とさえ違ってるかもしれない〉ってね。それでその反応を受け入れて、今回の歌詞は変化したと思う。ただ、今作でも同じような反応があったらさすがにキレるよ(笑)」。

〈聴く人の想像力が入り込める余地を作った〉という、経験を重ねたからこそ出てきた言葉の数々。それは計らずしも、彼がキッズの時に熱狂していたバンドのひとつ、マイナー・スレットがフガジへと進化していった際に見せた推移とシンクロしているようにも感じるのだが……。その歌詞から見てとれる成熟は、ミース(=神話)とミステイク(=誤り)の2つの意味を掛け合わせたタイトル、ノアの方舟をモチーフにしたジャケットといった意味深な2つのトピックにも同様に感じる。

 さて、最後に彼らの圧倒的なパフォーマンスによるライヴの話もしておこう。そのライヴを観たあるギタリストは、みずからのバンドのUKツアーのゲストに!!!を指名した。

「(レッド・ホット・チリ・ペッパーズとのツアーは)すごくおもしろかったよ。成功したバンドというのが、どういう感じなのかもわかったしね」。
▼!!!の作品を紹介

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2007年03月15日 11:00

更新: 2007年03月15日 20:29

ソース: 『bounce』 284号(2007/2/25)

文/池田 義昭

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