こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

特集

BLOC PARTY 革新的で好奇心旺盛、それが僕らさ!


 「ロックとダンスを融合させるってアイデアは別に新しくはないけど、成功例はごくわずかだろ? LCDサウンドシステムにラプチャー、あとはプライマル・スクリーム『Screamadelica』。あのバランス感は理想的だよね」。

 そう語るのはブロック・パーティーのフロントマン=ケリー・オケレケだが、このリストに彼らはみずからの名前も加えるべきだろう。ブロック・パーティーはご存知、結成3年目にあたる2005年にリリースしたデビュー作『Silent Alarm』がNMEの年間ベスト・アルバムに選ばれたほか、世界中のプレスからの賞賛を一身に受けて、100万枚のセールスを記録。並みいるUKの次世代バンドのなかでもダントツで将来を有望視されているロンドン出身の4人組だ。先頃登場したセカンド・アルバム『Weekend In The City』ではその期待を裏切らず、エレクトロニックな手法を大胆に導入。深遠な奥行きと不穏な緊張感を湛えた、フューチャリスティックなダンス・ロックに到達してみせた。

 「ここ数年、普通のロックに心を動かされることがあまりなくて、いいなと思うのはダンス・ミュージックやR&Bばかりだったんだ。ティンバランドが作る音とかは素晴らしいよね。それで、ロックのエネルギーを維持しつつも、前作より直球でエレクトロニックな音を表現してみたくなったんだよ」。

 そんなケリーの強い意思でサンプラーやドラムマシーンを駆使し、U2の近作で知られるジャックナイフ・リーをプロデューサーに起用してレコーディングを敢行。特に本国で大ヒット中の先行カット“The Prayer”は、まさにティンバランド的なビートを意識したサンプルで構築した曲で、本作のカギを握っているとか。

「音作りの手段や材料が増えると、そのぶんテンコ盛りになりすぎる危険性があるから、そのへんは注意したよ。いちばん大切なのは抑制することだし、構成要素をいたずらに増やすんじゃなくて、逆に必要なものを厳選したつもりなんだ」とケリーは説明する。

 もっとも、バンド内には新路線に対する抵抗もあったようで、マット・トン(ドラムス)は「アルバム完成までに僕は2度バンドを脱退したよ!」と苦笑する。

「そりゃ、自分のパートを機械で置き換えると言われたら危機を感じるだろ(笑)? でも結果的には絶妙なバランスで異素材をミックスできたと思うし、結局のところブロック・パーティーのトレードマークは特定のスタイルじゃなくて、革新的で好奇心満々のスタイルにあるんだよね」。

 が、その一方でケリーが綴った言葉に耳を傾ければ、踊ってばかりもいられなくなる。今回の彼は排他的な傾向が強まっている英国社会をテーマに掲げ、パーソナルな観点から警告を発しているのだ。なにしろ彼とマットはそれぞれナイジェリアと中国にルーツを持つ移民二世。バンドとして、この手の問題には敏感にならざるを得ないという。

「自分の考え方が主流派とは違うってことを常に意識している僕たちは、最近居心地の悪さを感じるんだ」とのケリーの指摘に、マットも頷きながら加える。

「だからこそサウンドもさることながら、世界にどう関与してどんなメッセージを発信するかって面でも、僕らは他のバンドとは違うんだよ」。
▼ブロック・パーティーの作品を紹介

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2007年03月15日 11:00

更新: 2007年03月15日 20:29

ソース: 『bounce』 284号(2007/2/25)

文/新谷 洋子

インタビュー