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特集

坂本龍一×桑原茂一(2)

NO NUKES, MORE TREES


坂本「ある日パッと浮かんだ言葉が〈NO NUKES, MORE TREES〉なんです。環境問題でなにかに対する〈反対〉や〈No〉を叫ぶだけじゃなくて、もっとポジティヴなメッセージも発したいなと。そんな〈NO NUKES, MORE TREES〉を、茂一がずっとやってきている〈T-shirts as media〉(註5)と共にTシャツを作ったら、アーティスティックな拡がりが出てくるだろうと思って」

桑原茂一「いまの時点で19名のデザイナーがいろんなデザインを作ってくれてます。これからもどんどん増える。長く続くムーヴメントになるんじゃないかな」

坂本「うん、長く続いて、持続性があるって大事だよね。この〈NO NUKES, MORE TREES〉Tシャツの売り上げは、実際に植樹に使われるんですよ。植樹された木って、それこそ何十年何百年も残っていくものだし、ずっと続いていくものでしょ」

桑原「そう。この活動が〈俺もこういうことやりたい!〉っていう人たちが集まるきっかけになればいい。ファッションや音楽を通してできることっていっぱいあると思うんです」

──いまの社会に対して音楽が果たす役割とはどのようなものでしょう。

坂本「心に余裕がないと音楽は楽しめないけれど、同時に音楽は心に余裕を持たせる役割も持ってると思うんです。それは笑いと同じなんですよ。窮屈なとき、フッと頭の筋肉をほぐしてくれる。それが昔から音楽とか笑いの大きな役割のひとつだったわけで、社会の薬でもある。免疫力を高めたり、病気を治したり」

桑原「で、実は癒されてるだけじゃないんですね。たとえば教授の音楽を聴いたり、コンサートに行ったりすると、自分のなかで眠っていたなにかが呼び覚まされるんですね。〈自分はちゃんと生きてるのか!〉って気づかされると言ってもいいかな。使ってない筋肉が自分のなかにあることに気づかされちゃう。使ってない筋肉を使ってなにかをやりたいって衝動が起こるんですね。癒されてそのまま満足しちゃうんじゃなく、次のアクションを起こす糧になるっていうのが、いい音楽やコメディの役割だと思う。癒されちゃうと、そこで終わっちゃうでしょ。TVの笑いなんかもそうなんですけど、一見、人を満足させているように見せながら、その先にいかせない音楽や笑いが多い。本当のことや真実って怖かったり疲れたりするものなんですよ。でも、それをあえて見せて知らせるっていうことから、人は凄いエネルギーを得る。なにができるかわからないけれども、とにかくなにかやる、始めるっていう衝動が大事なんです。いい音楽を聴くと、いま自分はどういう時代に生きているんだってことがよくわかると思いますよ」

註5:CLUB KINGがプロデュースする、Tシャツをメディアとして捉えたコミュニケーション・プロジェクト。2001年からスタートし、多くのデザイナー、イラストレイターなどが参加してきた。
http://www.tshirtsasmedia.com/

カテゴリ : スペシャル

掲載: 2007年02月22日 16:00

文/吉村 栄一

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