AMERICAN ROOTS
ルーツ再考から発展する音楽性
ここ数年続いているルーツ・ミュージック再評価の流れのなか、中堅からヴェテランのみならず、新たな才能からも良質な作品が相次いだ2006年。傾向としては、カントリー、ブルースが兄弟音楽であるフォークやジャズ、ロックと自然な流れで折衷してきているところか。ニューオーリンズ音楽への熱き眼差し、そしてジョニー・キャッシュの遺作やリトル・ウィリーズなどの大ヒットに見られる、カントリー熱のさらなる高まりも大きなトピックといえる。
THE LITTLE WILLIES 『The Little Willies』 Blue Note
2006年の音楽シーンにおいて、ここまで純度の高い古き良きカントリー・サウンドをあっけらかんと鳴り響かせた様は実に痛快でありました。従来のカントリー・ファンのみならず、多くの音楽ファンの耳を〈この音〉に向けさせたノラ・ジョーンズにも感謝!
(野崎)
ELVIS COSTELLO & ALLEN TOU-SSAINT 『The River In Reverse』 Verve Forecast
2006年、もっとも美しい共演によって奏でられた珠玉の楽曲たちは人々の心を静かに震わせ、改めてアメリカ音楽の故郷ニューオーリンズへと想いを馳せさせた。新曲はもちろん、トゥーサンが再演した名曲の出来にも感涙……。
(野崎)
DIXIE CHICKS 『Taking The Long Way』 Columbia
何ごとにも揺るがない強い意志をもって成長してきたカントリー3人娘。今作では鬼才リック・ルービンをプロデュースに迎え、より幅広い音作りにトライ。ロック指数を高めた文句ナシの決定的傑作となりました。最高にカッコイイ彼女たちの、次なる一手が待ち遠しい。
(野崎)
RASCAL FLATTS 『Me And My Gang』 Lyric Street
2006年もっとも熱かったポップ・カントリー・グループといえばもちろんこの3人組! 哀愁漂うメロディーとアメリカン・ロックの王道を行くサウンド作りは、カントリーの枠を飛び越えてポップ・フィールドでも大ブレイク! 全米では記録的なセールスを上げました。
(野崎)
KEB' MO' 『Suitcase』 Red Ink
コンテンポラリー・ブルースの旗手としてその動向が注目を集めてきた彼。年々そのスタイルは柔軟さを増していたが、8作目となる本作ではジャック・ジョンソンなどのサーフ系シンガー・ソングライターにも通じるフォーキー&リラクシンな佇まいで、幅広いリスナーの心を和ませた。
(野崎)
ASYLUM STREET SPANKERS 『Mo-mmy Says No!』 Spanks-A-Lot
アコースティック・スウィング・ブームも落ち着きつつある昨今ですが、このオースティンいちの大所帯アコースティック楽団は変わらず絶好調! 子供の視点をテーマにしつつも、過激なユーモア溢れる快(怪)作でファンを喜ばせました。
(野崎)
JOHNNY CASH 『American V:A Hun-dred Highways』 Lost Highway
死の間際まで音楽を追求し続けた彼のアティテュードが、作品にかつてないほどのリアリティーを宿らせた。死後3年を経てリリースされた本作が全米No.1を獲得したことからも、多くの米国民が彼の歌声を愛し、いまなお求め続けているかがわかる。
(野崎)
THE DIRTY DOZEN BRASS BAND 『What's Going On』 Shout! Factory
ニューオーリンズ屈指のブラスバンドである彼らは、マーヴィン・ゲイの名作を全曲カヴァー。マーヴィンが71年に放った〈いま何が起こっているのか?〉という普遍的なメッセージを地元の現状に照らし合わせ、改めて世に問いかけてみせた。
(野崎)
ROBERT RANDOLPH & THE FAMILY BAND 『Colorblind』 Warner Bros.
もはや〈スティール・ギター界のジミヘン〉といっても過言ではない。エリック・クラプトンをはじめとする豪華客演陣にもまったく臆することなく、よりファンキー&ソウルフルにロックしてみせた存在感には圧巻の一言!
(野崎)