CROSSOVER
折衷性から緩やかな分化へ
やたらにミクスチャーされたものがクロスオーヴァーだと捉えられるような状況もまだあるが、もはやそういった折衷の美を踏まえたうえで、アーティスト個々のコアな流れへと分化していっているのは、コンポストなどこの界隈の主導者とされたレーベルの作品がより普通のジャズとテックなものに色分けされていっていることでもわかる。必要なのは、音楽がいかにエクレクティックかということじゃなく、リスナー側の柔軟な〈クロスオーヴァー感覚〉なのでは?
(出嶌)
LIQUID SPIRITS 『Liquid Spirits』 Kindred Spirits
ジャズとソウルとヒップホップがクロスオーヴァーしてて……なんて書いても、いまのご時世ではあたりまえな感じですが、そのなかでも群を抜くクォリティーだったのがこの人たち。今作でヨーロッパ産ブラック・ミュージックの水準を引き上げました。
(櫻井)
ERNESTO 『Find The Form』 コロムビア
もはや〈北欧のジャミロクワイ〉なんて冠は必要ないでしょう。クラブ・ジャズとポップスのフィールドを軽々とクロスオーヴァーして作られた、豪華プロデューサー参加の日本企画盤。この一枚で日本での認知度もグッと上げ、甘い声とルックスが多くの女性をトリコにしました。
(櫻井)
RASMUS FABER 『So Far』 ビクター
これまでリリースされたシングルの編集盤という体裁ながら、本人のリエディットも加えて話題曲を満載した2006年を象徴する一枚。やりすぎずに適度なポップ感を伴ったクロスオーヴァー・ハウスで、2006年でもっとも女子ウケの良かったアーティストなのでは?
(ビグフォン)
LEFTIES SOUL CONNECTION 『Hutspot』 Melting Pot
DJシャドウ“Organ Donnor”のカヴァーが人気を呼んだファンク・バンド。この初アルバムでもアイズレー・ブラザーズ~ミーターズのメドレーなど、現在進行形ファンクの逞しさをタイトに披露。メルティング・ポットは2006年もコンピをリリースするなど好調でした。
(出嶌)
BUGZ IN THE ATTIC 『Back In The Doghouse』 V2
西ロンドンの銀河系プロデューサー集団が、全世界に向けてようやく放ったフル・アルバム。ブロークン・ビーツと呼ばれたサウンドが難解だとされたのはもう過去の話で、この作品によってそんな呼び名を超えたポピュラリティーを確立することに成功。
(櫻井)
KOOP 『Koop Islands』 Compost
オールド・タイミーな雰囲気のスウィング・ジャズに乗るヴォーカルは、お馴染みのユキミ・ナガノとアール・ジンガー。いまなお衰えることのない北欧クラブ・ジャズの人気ぶりを再確認させられた一枚であり、もう〈クラブ〉すら通過した新しいジャズの姿を提示しているはずだ。
(櫻井)
- 前の記事: THE b-est REGGAE ACT CHAM
- 次の記事: TECHNO/HOUSE