歌とメロディーがカギになった1年
ヒップホップ同様にローカル化の波も押し寄せたR&Bだが、大括りにして見ると、野心的なプロデューサー主導のサウンド(アレンジ)志向が強まったことへの反動か、ソウルフルな歌そのものを魅力とするシンガーや、普遍的なメロディー主体の作品に人気が集まった。この動きはR&Bに馴染みのなかったリスナーも惹き付けながら継続していくだろう。また、ケリー・プライスなどR&Bからの転向組も多いアーバン・ゴスペルはそろそろ日本でも大きな話題を呼びそうだ。
(出嶌)
MARY J. BLIGE 『The Breakthrough』 Geffen
まさにオールスター的な制作陣やゲストたち、ゲーム&50セントの名曲リメイクなど、さまざまなトピックを差し引いても余りある女王の貫禄と歌魂が生んだ傑作。現行感と王道感をエモーショナルに纏った“Be Without You”のヒットで、頂点にいる者の格を見せつけてくれた。
(佐藤)
CHRIS BROWN 『Chris Brown』 Jive
世界中のチャートを席巻した“Run It!”でセンセーショナルに登場した(当時)16歳のヤング・スター! 若さ弾けるエナジーもさることながら、甘酸っぱくも伸び伸びと響く歌声はすでに大物のオーラ全開。今後のさらなる飛躍を予見させる、一切隙ナシのデビュー作だ。
(佐藤)
ANTHONY HAMILTON 『Ain't Nobody Worryin'』 So So Def/Jive
2006年初頭をディープかつ渋みのある歌声でブルージーに温めた極旨盤。突飛なアプローチなどなくとも、声ひとつで聴き手を魅了できるサザン・ソウルマンだからこその頑なさが素晴らしい。ラファエル・サディークらの助力も文句ナシでした。
(佐藤)
NE-YO 『In My Own Words』 Def Jam
〈2006年の顔〉と言えば間違いなく彼! 本作のヒットが甘酸っぱくてキュンとさせる〈美メロ〉回帰の流れへとシーンを導き、R&Bのモードも未来も変えました。ジョンタ・オースティンらソングライター出身シンガーに道を拓いたのも重要だし、本年度どころか歴史に残る名作と断言。
(池田貴)
JAHEIM 『Ghetto Classics』 Atlantic
ケイ・ジーらによるソウル・サンプリングの絶妙な用い具合、胸を焦がすメロディー、そしてリッチかつタフな歌声。男性ソロ・シンガーの良作が多く登場した2006年のR&Bシーンでひときわ光った3作目。スコット・ストーチさえも彼のためにソウルで正装? これは名作だ。
(佐藤)
PRINCE 『3121』 NPG/Universal
何度目かの全盛期がジワジワ訪れつつあった殿下だが、ソリッドで粘着質のファンクを繰り出した今作は17年ぶりに全米1位をマーク! 本作そのもの以上に、ティンバランドやウィル・アイ・アム、ファレル、アンドレ3000らがプリンス感を全開にしていたのも2006年の特色だろう。
(出嶌)
CORINNE BAILEY 『RAE Corinne Bailey Rae』 EMI
いそうでいなかった感性と素質を備えた逸材で、英BBCが〈2006年もっとも期待する新人〉に選んだ予想が見事に的中! ホロ苦い歌声に洒脱なサウンドがマッチした本作は、本国UKはもちろん、UKモノが浸透しにくいUSでも息の長いロング・ヒットを記録中。
(池田貴)
CHRISTINA MILIAN 『So Amazin'』 Island
彼女にとって2006年は大きな転機となる年だったはず。クール&ドレーと仲睦まじく(特にドレーとね!)作り上げたダーティー・サウス色全開の今作で、脱ポップ・アイドルを完了したのはいいとして、これを最後にレーベルまで離脱……その決断が吉と出ることに期待したい。
(池田貴)
RIHANNA 『A Girl Like Me』 Def Jam
デビューから1年も置かずに登場した2作目は、いまをときめく可憐なディーヴァの旬が詰め込まれた、ポップR&Bの究極形とも言えるアルバムに。シングル“SOS”と“Unfaithful”のヒットで、カリスマティックなシンデレラ・ストーリーにまた新たな1ページを加えた。
(池谷)
KIERRA KIKI SHEARD 『This Is Me』 EMI Gospel
初来日で見せたふくよかなルックスにも納得(?)の超絶歌唱を披露し、グッとアーバン度を増したサウンドに乗ったセカンド・アルバム。ダークチャイルド・ゴスペルの仕事ぶりにも目を見張った。良作が続いた2006年のアーバン・ゴスペルを代表する一枚。
(池田貴)
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