こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

特集

〈コールド〉な感覚を持った短編集

 今作には、アルバム全体をとおして〈コールド〉というテーマが存在している。ここ最近、デイヴィーが詞を書くときにいちばんマッチするのが「〈コールド〉という感覚」だそうで、それはすなわち冷たい雰囲気や冷めた感覚、少し引いた目線や客観的な考え方などであり、自身の大きな判断基準にもなっているという。タイトルの〈Decemberunderground〉もそんな〈コールド〉の感覚を表す重要な要素のようだ。

「今作は1曲1曲が〈コールド〉という共通項を持った短編集で、〈December〉は、〈コールド〉を表すのにもっとも相応しい言葉のひとつだったんだ。(輸入盤の)ジャケに使われた雪の中にいるウサギのアートワークは、長年AFIの作品を手掛けてきたアラン・フォーブスのアイデアなんだけど、今後のAFIのトレードマークになりそうなくらい〈コールド〉の感覚にピッタリくるね」(デイヴィー)。

 なるほど、初期のような一直線に感情を爆発させるパンク・ロックだけでなく、白黒でダークなゴスいイメージも定着してきたいま、その〈コールド〉という感覚はAFIというバンドのひとつのキーワードになっているのは確かだ。ところで〈December〉の解釈はわかったけど、そこに〈Underground〉という言葉がついているのはどういう意図があるのだろうか。

「〈Underground〉は、いわゆるメジャー・フィールドとは距離を置いている場所。つまり一般の社会とは離れた〈コールド〉な場所 で、自分たちにとって特別な場所という感覚があるんだ。僕らはそういう場所で育ってきたから、昔からの友人との大切な場所という意味でつけたんだよ」(デイヴィー)。

 メジャー・レーベルと契約してビルボードで1位を取ったとしても、「マインドはバンドを始めたころとまったく同じだから、アンダーグラウンドのスピリットを持ち続けていることはあたりまえのこと」(アダム・カーソン、ドラムス)と言い切る彼ら。では、アンダーグラウンドで活動してた頃と現在とで大きく変わった点は?

「自分たちのやってることを、さらに広く知ってもらえるようになったこと。あと、AFIは映像などのヴィジュアル面も重視しているんだけど、イメージをカタチにしたいと思ったときに十分なお金が使えるってことかな(笑)」(デイヴィー)。

 確かにシングル・カットされた“Miss Murder”のプロモ・クリップは、耳から離れないサビのインパクトと共に映像の美しさでも話題になっている。デイヴィーいわく「年老いてから死ぬのではなくて、若いまま死ぬことの美しさをイメージした」という同曲だが、プロモ・クリップの完成度を見れば、楽曲だけでなく、ヴィジュアル要素も含めて彼らの〈バンドとしてトータルの表現力もステップアップしたい〉という意志がハッキリと伝わってくる。バンドを続けるうえで「進化していくことがテーマ」だと言い、いまの成功を「自分たちが良いソングライターとして成長してきた結果」(ハンター、ベース)と自信満々に語る彼ら。だが、そこに慢心することなく、いつまでも初心と探究心を忘れずにその歩を進めているのだ。

「これからも自分たちの中にあるアイデアと可能性が詰まった封筒を開封して、カタチにしていきたい。それには勇気もいるし、もっと良い詞や曲を書いていかなきゃって思うよ」(デイヴィー)。

 今年の〈サマソニ〉に続いて、11月には単独での来日公演も控えているAFI。〈コールド〉なイメージとはまったく正反対の熱いステージをカマす彼らの姿を、ぜひこの目で見届けようぜ!

▼AFIのベスト盤を紹介

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2006年11月16日 11:00

更新: 2006年11月16日 21:45

ソース: 『bounce』 281号(2006/10/25)

インタビュー