P. Diddy(2)
音楽に対する情熱
そんなディディの果敢な姿勢はネイト“デンジャ”ヒルズの制作による“Diddy Rock”や“Wanna Move”といったフューチャリスティックなエレクトロ・ポップをはじめ、リサ・リサ&カルト・ジャムを想起させるキーシャ・コールとのデュエット曲“Last Night”、『1999』~『Purple Rain』期のプリンスを参照にしたと思われるウィル・アイ・アム制作の“Special Feeling”などトレンドの80'sテイストを取り込んだ楽曲群に象徴的だが、一方では定番ネタの“Shaft In Africa”を引用した(ジェイ・Zの新曲“Show Me What You Got”とかぶった!)“We Gon' Make It”のようにオーセンティックなヒップホップ・ナンバーから、ニコール・シュルジンガー(プッシーキャット・ドールズ)をフィーチャーした先行シングル“Come To Me”に代表されるトキシックなループを持つダンス・チューンまで、バッド・ボーイの王道路線を継承したものも少なくない。その他、特定の曲を取り上げて紹介していくのも困難なほどハイライトだらけのアルバムで、それはヒップホップ史上最大スケールとなる豪華なゲストの陣容からも察してもらえるんじゃないかと思う。
「ゲストの選択基準はソウルフルな音楽性があること、そして音楽に対する情熱を持っていること。自分が仕事をしたすべてのアーティストやプロデューサーに共通して言えるのは、みんな音楽を愛していることだね」。
『Press Play』に注ぎ込まれた才能は、先に触れた以外でもメアリーJ・ブライジやクリスティーナ・アギレラ、ビッグ・ボーイ(アウトキャスト)、シアラ、ナズ、ジェイミー・フォックス、シー・ロー、トゥイスタ、ショウナ、アヴァント、ケリ・ヒルソン(彼女を擁する新進ソングライター・チーム=ザ・クラッチの動向にも注目!)らの名前が挙げられている。さらにプロデューサーとしては、カニエ・ウェスト、ファレル、ティンバランド、リッチ・ハリソン、ハヴォック(モブ・ディープ)、K・デフ(!)、マリオ・ワイナンズらが参加、と総勢20名以上。これが単なるこけおどしではなくあくまで音楽そのもののクォリティーを追求した結果であることは、CDをプレイヤーにセットしてプレイ・ボタンをプレスしてみればおのずとあきらかになるはずだ。
「このアルバムの究極的なメッセージは〈ラヴ〉。自分の音楽に対する愛について語っているんだ。タイトルに『Press Play』って付けたのも、今回のアルバムは歌詞の過激さよりも音楽自体が中心だってことを強調したかったから。俺は『Press Play』を通じて音楽やリスナーとリコネクト(再結合)したいと思ってるんだ」。
▼『Press Play』に参加したアーティストの作品を一部紹介