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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2006年10月26日 11:00

更新: 2006年10月26日 22:41

ソース: 『bounce』 281号(2006/10/25)

文/出嶌 孝次

安息を手に入れた、新しいモニカの幕開け


  デビューから10余年、オーセンティックなR&Bシンガーとしてその域に並んでくる後進はまだ見当たらない。だからこそモニカは、ガツガツと進化していくシーンの流れと折り合いを付けあぐねていたようにも思える。特に前作『After The Storm』のリリース前は、交際相手のC・マーダーが投獄されたり、それを乗り越えて完成させた『All Eyez On Me』がお蔵入り(日本ではリリース)するなど、私生活のゴタゴタと創作活動の停滞が入り混じった状況だったようだ。で、名が体を表す『After The Storm』で初の全米チャート1位を獲得し、安定した人気と実力を証明してから3年。出産を経験して母親になったモニカが帰ってきた。その間には地元のアトランタが何度となく脚光を浴びたわけだが、彼女はこう語る。

「新たな気持ちでアルバム制作に入るための3年間だったわ。最初の1年は生まれたばかりの息子と過ごして、精神的な安定を与えてもらった。正直、家族の生活をスタートするということのほうが大切だったから、そこまで他のアーティストを気にして聴いていたわけじゃないの(笑)。アトランタのアーティストが注目されているのはとても嬉しいし、もちろんヤング・ジョックなんかは大好きだけどね」。

 そしてこのたび届けられたのが、シンプルな10曲入りのニュー・アルバム『The Makings Of Me』となる。同郷のデム・フランチャイズ・ボーイズをフィーチャーしたスナップスの先行シングル“Everytime Tha Beat Drop”は彼女にとっての大きなチャレンジ……かと思いきや、「聴き慣れている音楽だから、別に大変じゃなかったわよ。私はアトランタのヒップホップ・ビートで育ってきたんだからね」とキッパリ。同曲を手掛けたジャーメイン・デュプリをはじめ、前作のヒットに寄与したミッシー・エリオット、ブライアン・マイケル・コックス、アンダードッグズら馴染みの制作陣による楽曲は、どんな曲調であってもどことなく上品に響き、モニカの優美な歌声を支えている。

「制作陣はプライヴェートでも友達の人が多いわ。もちろん素晴らしいプロデューサーだからいっしょにやるわけだけど、私を個人的に知っている人のほうが、私にどんなサウンドが合っているかわかるでしょ」。

  トゥイスタと共演してラップも披露した“Hell No”(「ラップは本当に大変だったのよ! 彼がライムを書いてくれて、〈絶対にできるから!〉って何度も励ましてくれたわ(笑)」)など、シンプルな作りのなかにいくつもの聴きどころが用意されている。なかでも絶品なのは、ミッシーが手掛けたソウルフルな“A Dozen Roses(You Remind Me)”だろう。そこでサンプリングされているカーティス・メイフィールド“The Makings Of You”は、『The Makings Of Me』という表題に繋がる引用源でもある。

「この〈Me〉はアーティストのモニカでも、ひとりの人間としての〈Me〉でもある。この2人はほとんど同じ人物なの。アーティストと一個人を両立できる人もたくさんいるけど、私はそんなに器用じゃないのね。今回はそんな私がどういった感情や経験から形成されている人間かを語るアルバムだから、このタイトルにしたのよ」。

 なお、モニカはこの本が出る日に26歳になる。誕生日にアルバムを出すとか大仰なことをしなくても、この人は普通に歌っているだけで素晴らしい。そして、そういうシンガーはそうそういるもんじゃないのだ。

▼モニカの作品を紹介

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