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カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2006年10月05日 12:00

更新: 2006年10月05日 21:51

ソース: 『bounce』 280号(2006/9/25)

文/松田 敦子

最強の新作を携えたチンギーのフッドスター宣言


「このアルバムを作るのにプレッシャーはなかったよ。他のアルバムと同じだよ。同じようにフォーカスして、ジンクスとかは気にしなかった。ただ、いいアルバムを作りたいと思っただけ。みんなが気に入ってくれるアルバムを作りたかったんだ」。

 2003年のファースト・アルバム『Jackpot』に続き、そこからわずか1年のインターヴァルでリリースしたセカンド・アルバム『Powerballin'』をソフォモア・ジンクス(いわゆる〈2枚目のジンクス〉)をものともせずプラチナム・セールスに導いたチンギーは、それに続くニュー・アルバム制作時の心境をこう語る。そのようにプレッシャーとは無縁のうちに今回完成した『Hoodstar』の冒頭では、ついに自身を〈キング・オブ・ザ・ミッドウェスト〉と呼んでいるが、そんな彼の自信の現れはアルバム・タイトルからも感じ取ることができる。

「〈Hoodstar〉というのは、フッドの何もないところから出てきて、自分でビジネスを始めたり、一生懸命働いて、その見返りに自分の欲しかったものを手に入れてるような奴らのことだよ。エンターテイナーでもセレブリティーでも、フッド出身でステイタスを手に入れた奴だね」。

 その新作は「〈Hood Side〉と〈Star Side〉という2つのパートに分けることができる」という。〈Hood Side〉はストリート・スマートでハードコアな楽曲、そして〈Star Side〉はパーティー・チューンを中心に構成したのだそうだ。

「〈Hood Side〉に“Cadillac Door”という曲があるんだけど、そこでは自分の人生を昔のキャデラックに例えてるんだ。苦労していた過去から現在に至るまでのことを語っていて、成功していても、自分のルーツを忘れないって言ってるんだ」。

 他にも〈Hood Side〉には、チンギーがいつになく畳み掛けるようにハードにラップする“Club Gettin' Crowded”のような曲もある。同曲をプロデュースし、ゲスト・アーティストとしても参加しているのが、先日ヒップホップ・アーティストとして初めてアカデミー賞を受賞したメンフィス出身のスリー6マフィア(DJポール&ジューシーJ)だ。彼らをはじめ、マニー・フレッシュやMrコリパークなど、今回は南部出身のプロデューサーを多く起用。それによって幅を広げたサウンドに乗るチンギーは、以前にも増して声色やフロウを器用に操りながら、多彩なラップを披露している。

「オレがやりたいと思ったプロデューサーに参加してもらっただけだよ。外部プロデューサーといっしょにやると、違うサウンド、違うフレイヴァーをもたらすことができるんだ」。

 そう確信犯的な笑みを浮かべながら説明する彼。ところで、チンギーと言えば、あのネリー同様にセントルイス特有の訛りを前面に押し出し、地元をレプリゼントしてきたことで知られているが、それは今作でももちろん健在。先行カットの“Nike Aurr's & Crispy Tee's”はまさにそんなトラックだ。〈Nike Aurrs〉とは〈Nike Airs〉のことで、チンギーの名前をインターナショナルに広めたデビュー・シングル“Right Thurr”(正しい綴りは〈Right There〉)と同じように、〈エアーズ〉を〈アーズ〉と発音する典型的セントルイス訛りを示した曲なのだ。

 一方、ファンの方々ならばもうご存知かと思うが、チンギーは「Scary Movie 4」にカメオ出演し、すでに映画の世界にも足を踏み入れている。そして、2本目の出演作となる「The System Within」という映画(公開時期は未定?)では早くも大役に抜擢され、本格的にハリウッド進出を果たしているのだ。まさに〈Hoodstar〉を地でいく彼が、次の目標として掲げているのが自身で映画をディレクションすること。

「オレのアルバムのように〈Hoodstar〉の映画を作ろうと思ってる。いま、ストーリーを書いてもらってるところだよ」。

 セントルイスの〈フッド〉から生まれた〈スター〉のチンギーが、この先どこまで突き進んでいくのか、本当に楽しみだ。
▼チンギーの作品を紹介

▼『Hoodstar』に参加したアーティストの作品を一部紹介

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