耳で聴いたピープル・トゥリー(2)
THE STAPLE SINGERS
『Will The Circle Be Unbroken?』 Vee-Jay(1960)
王道のゴスペルから世俗音楽へと発展する過程で、カントリーやフォークとの親和性を強めていったことでも知られるステイプル家。古くからの賛美歌を改編してヒットさせた表題曲はキャッシュも取り上げた。それから40年後、リード・シンガーのメイヴィスはキャッシュのトリビュート盤で同曲を故人に捧げている。(出嶌)
RY COODER
『Into The Purple Valley』 Reprise(1972)
必殺ルーツ音楽仕事人のライ・クーダーは、キャリア初期を飾ったこの名作にてキャッシュの“Hey Porter”をマンドリン片手にゆるりとカヴァー。90年代に入って、『Dead Man Walking』のサントラに収録されたキャッシュの“In Your Mind”をプロデュースしたのもライでした。(北爪)
KEB' MO'
『Suitcase』 Red Ink(2006)
『Kindred Spirits』で“Folsom Prison Blues”をカヴァーしていたり、ハンク・ウィリアムスのトリビュート盤『Timeless』にキャッシュと共に楽曲を提供していたりするケブ・モ。カントリー・ブルースにソウルフルなスパイスを加える彼だが、ジャンルという縛りに捉われない歌の佇まいこそかキャッシュ的?(達磨)
頭脳警察
『1』 Niw!(1972)
アコースティック・ギターを掻き鳴らし、そのノドを乱暴に震わせたジョニー・キャッシュとPANTA。カントリーに括っても、そしてフォークに括っても、2人の歌はハミ出すところがあまりに多いのだ。アウトプットは違えど、社会に対して何らかの視線を投げかけ続けてきたこともまた然り。(達磨)
PEARL JAM
『Benaroya Hall: October 22nd 2003』 RCA(2004)
傍流から始まっていつのまにか本道を歩んでいたという共通点もある両者。彼ら初のアンプラグド・ライヴを収録したこの実況盤では、ボブ・ディラン“Masters Of War”などと共にキャッシュの“25 Minutes To Go”も披露されている。いつのまにか深い皺を刻んでいたエディ・ヴェダーの歌唱は天国に届いたか。(出嶌)
BREAKESTRA
『Hit The Floor』 Ubiquity(2005)
ブレイクビーツを生演奏で再現する西海岸のバンド、ってことで場違いっぽく思えるだろうが……中心人物のマイルスはユビキティ発のコンピ『Rewind! 3』(2003年)にて“Ring Of Fire”を堂々とカヴァーしている。ついでに彼の親父がリトル・フィートのフレッド・タケットだと書けば、少しは収まりもいいかね?(出嶌)
ELVIS PRESLEY
『His Hand In Mine』 RCA(1960)
本作を皮切りにセイクリッド・アルバムを発表していくキングと、一貫してヒムを作中に忍ばせ続けたキャッシュ。同じように敬虔なクリスチャンであり、ゴスペル・シンガーをめざしながらも聖俗の狭間で引き裂かれ続けた2人だが、何より同じメンフィスのサンから世界へ飛び出していったことも重要な共通点だ。(出嶌)
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