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特集

THE INTERSTELLER FUGITIVES カントリー・ミュージックにはヤバい奴らがひしめいてるぞ!!

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2006年09月21日 12:00

更新: 2006年09月21日 20:11

ソース: 『bounce』 279号(2006/8/25)

文/桑原 シロー

 歌が始まると、プワッと鮮血が飛び散って周囲が真っ赤に染まる。その血はこちらの目や耳に入り込み、カサカサした痕を残す、というのが典型的なジョニー・キャッシュ体験。痛くて苦くて真っ暗、彼にはそんな曲が少なくなく、〈ヤバイヤバイ〉と口走りつつ聴くことになるのだが……そういえば伝説のカントリー歌手にして永遠のアウトロー、ハンク・ウィリアムスを聴く時にも同様の反応を示すことが多くある。内なる孤独を搾り出すようにして歌われるブルーな失恋ソングなどを聴くと、思わず頭から布団を被りたくなる。深く濃い、本物の〈夜〉を描くことのできる天才だ。

また、ジョニーには刑務所の冷たい壁の感覚を伝える歌も多いが、それは大ヴェテラン、マール・ハガードの歌にも多く見られるものだ。彼は〈塀の中〉ソングでもよく知られているが、その描写のリアルさは実体験によるもの。ところどころに顔を出す〈ワルでなぜワルい?〉という開き直りぶりがヤバイ。アウトローなら、70年代にナッシュヴィル・カントリーに反旗を翻したウェイロン・ジェニングスも思い浮かぶ。揺るぎない反骨精神はジョニー譲りで、歌の骨太具合も同じく。そして、いまのカントリー界の反骨の人といえばスティーヴ・アールをおいて他にはいない。今日も彼は周りの腑抜けた奴らに向かって〈おめえらいったい何やってるんだ?〉という檄を飛ばし続けているけれども、そりゃやっぱジョニー譲り。ならず者の心の内をきちんと理解する男でもある(ちゃんと投獄経験もあり)。ジョニーのジメッとした世界観、カサカサしたかさぶた感覚、ここらへんを現代の感性で再生せんと試みるのがフロリダ出身のジム・ホワイトだったり、ベックだったりするが、それはヤバいカントリー・ミュージックの再認識作業でもあるのだ。彼らの部屋に、ヤバイ顔をしたジョニーのポートレートが貼られているのが見える。

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介


スティーヴ・アールのベスト盤『The Definitive Collection 1983-1997』(Hip-O)


ジム・ホワイトの97年作『Wrong Eyed Jesus(Mysterious Tale Of How I Shouted)』(V2)

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