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特集

BOTH SIDES OF T,S SOUND 角松サウンドの屋台骨を支える2つのムードを探ってみよう!

URBAN SIDE
  80年代のペラペラな〈ブラコン歌謡〉と角松製の〈歌謡ブラコン〉が一線を画していたのは、後者がAORやフュージョン、ブラック・コンテンポラリーに自然と親しんできた耳で、同時代的なアーバン音楽を消化した結果の産物だったからだろう。そのルーツとしてもっとも象徴的なのはチェンジや別掲のルーサー・ヴァンドロスで、実際にそのグルーヴを支えたマーカス・ミラー&ヨギ・ホートンの演奏、マイケル・ブラウアーのミックスを得て、いわゆる〈NYサウンド〉に踏み込んだのが、オリジナル・アルバム未収録なれど超重要曲の“Girl In The Box”だ。そんなこだわりは、88年作『Before The Daylight』ではジャム&ルイス(チェンジにも関与)のシェレール仕事を思わせる808風リズムの導入へと発展し、翌年の『Reasons For Thousand Lovers』にてシステムのデジタルな音作りを採用するに至っている。こうした感覚的かつ学究的なルーツへの憧れが角松のアーバン・サウンドに独特の存在感を与えてきたのだ。ついでながら、12インチでラテン・ラスカルズ(!)らをリミキサーに招いていたりする事実もかなり凄い……。(出嶌孝次)

NATURE SIDE
  近年の角松作品がそれ以前のものと異なる点として、世界各地のローカル・サウンドの積極的な導入が挙げられる。アイヌの伝統楽器、トンコリの使い手であるOKIとの度重なる共演はその象徴的な一例で、角松の手によるサントラ『白い船』ではそのOKIを招いているだけでなく、角松自身もトンコリをプレイ。〈伝統楽器をワールド・ミュージックとしては聴かせたくない〉(ライナーノーツより)という彼らしい独創的な世界が展開されている。なお、島根の神楽太鼓を導入していることも同作の注目トピックだろう。また、沖縄民謡へのアプローチも近年の角松作品の特徴だ。かつての“OKINAWA”(89年作『Reasons For Thousand Lovers』収録)でもそのニュアンスは採り入れられていたが、映画「ミラクルバナナ」ではしゃかりでも活動する沖縄の唄者、千秋と共に名曲“Smile”(サントラ未収録)を残すなど、より積極的な接近が目につく。加えて、同作にはハイチ風のパーカッション曲もあり、その好奇心は今後さらに刺激的な成果を残していきそうだ。(大石 始)

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2006年08月24日 11:00

更新: 2006年08月24日 22:58

ソース: 『bounce』 278号(2006/7/25)

文/大石 始、出嶌 孝次

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