世界に広がったニューオーリンズ・ヴァイブ(4)
RONNIE BARRON
『The Smile Of Life』 ヴィヴィド(1978)
ポール・バターフィールドのベターデイズにも参加していたピアニストの2作目で、うち7曲は細野晴臣と久保田麻琴の2人が制作。両者の世界が柔らかく溶け合うこれらの楽曲では、当時のNOサウンドが持っていた拡がりを堪能できる。ミーターズらが参加したその他の楽曲もいい出来だ。
(大石)
THE NEVILLE BROTHERS
『Fiyo On The Bayou』 A&M(1981)
思いっきり自分色を出し損ねたデビュー作から3年後、叔父ジョージ・ランドリーへの追悼の念が込められた本作は、出すべきところはきちっと、という姿勢で制作が行われた。大らかなセカンドライン・ビート曲にカリブ方面へ旅する曲などを披露、どの場面もしっかりピントが合っている。
(桑原)
WILLIAM D. SMITH
『A Good Feelin'』 Warner Bros./MUSKRAT(1976)
ロック界でも名を馳せたカナダ出身の鍵盤奏者が、シンガー・ソングライター的な歌世界を披露した名作ソロ。ここでもトゥーサンが制作にタッチし、ゴスペリッシュで大らかなニューオーリンズ・ヴァイブを導入。優雅でルーズなファンク感がまさにグッド・フィーリン!
(出嶌)
大滝詠一
『NIAGARA MOON』 Niagara/ソニー(1975)
大滝が自身のNiagaraから初めてリリースしたソロ作。同時期、細野晴臣らもNOサウンドに取り組みはじめていたが、ここではその最良の成果を見ることができる。かの地のノヴェルティー感覚とポップ魔術師としての手腕が高度に融合して生み落とされた、世界で類を見ないNOアルバム!
(大石)
ボ・ガンボス
『BO & GUMBO』 エピック(1989)
NOを中心とするディープ・サウスの滋養をたっぷりと吸収しながら、日本ロック史において異端の存在であり続けた彼ら。なかでもNO録音を決行し、シリル・ネヴィルらも参加したこのファースト・アルバムは名曲しか入ってない奇跡の一枚。グイグイと昇り詰めていくNO譲りのグルーヴが強烈!
(大石)
LLOYD PRICE
『Music-Music』 LPG/Pヴァイン(1976)
前回も紹介したロイド・プライスだが、自主レーベルから放った今作での彼はほとんど別人!? カリブ風味の“Street Love”から、哀愁が漲るアップやアーバンなミッドまで、70年代ニュー・ソウルのメロウでミクスチャーな空気感に完全呼応した粋な大傑作! 男臭い歌ももちろん最高だ。
(出嶌)
ESTHER PHILLIPS
『Home Is Where The Hatred Is -The Kudu Years 1971-1977』 Raven
フリー・ソウル界隈でも人気の彼女は『From A Whisper To A Scream』(72年)でアラン・トゥーサンの前年作『Toussaint』から2曲をカヴァー。リチャード・ティーらの洒脱な演奏がトゥーサン・メロディーのエレガントさを証明しています。いまならこのベストで。
(出嶌)
鈴木 茂
『BAND WAGON』 PANAM/クラウン(1975)
レコーディングで渡米したはっぴいえんどが目撃したのは、まさに『Dixie Chicken』をレコーディングしていたリトル・フィートだった。その2年後に彼らの演奏も得て登場した鈴木の初ソロ作は、微熱情緒とベイエリア・ファンクの向こうにニューオーリンズのグルーヴが滲む、古びない名盤に。
(出嶌)
THE BARONS
『Society Don't Let Us Down』 Funky Delicacies
いわゆるNOマナーではないNO産ソウルの一例として……60~80年代に活躍したヴォーカル・グループの楽曲集。狂おしいほどに甘い“Clap Your Little Hands”を筆頭に、モータウン風があったり、スライ調になったり、時代によってスタイルは多様ながら、芯のあるコーラスは絶妙だ。
(出嶌)
- 前の記事: 世界に広がったニューオーリンズ・ヴァイブ(3)
- 次の記事: 当事者が明かすNOサウンドの秘密