世界に広がったニューオーリンズ・ヴァイブ(3)
THE WINGS
『Venus And Mars』 EMI(1975)
ラゴス録音の次はニューオーリンズ。とにかくファンキーな土地が好きな人なんだ、ポールは。一聴して即、あのお方の手によるものとわかるホーン・アレンジ。そう、このレコーディングにはトゥーサンが力添え。同セッションで吹き込まれた“My Carnival”ではマルディグラ気分を満開にしている。
(桑原)
PATTI LABELLE
『It's Alright With Me + Released』 Westside
別掲のラベル時代に2度トゥーサンと組んだパティさんは、ソロ転向後の80年作『Released』で3度目の合体。互いが滋味を増しての再会だけあって、トゥーサンも持ち前のエレガントな手捌きで主役のシャキシャキした歌を調理している。〈NO詣で〉沈静期の作品だからこそ、逆に意義も深い。
(出嶌)
THE JAMES COTTON BAND
『High Energy』 Buddah/Universe(1975)
シカゴ・ブルースの文脈にサザン・ロックやファンクの要素を持ち込んで人気を集めた重鎮バンドが、シー・セイントで録音した逸品。トゥーサンが書いてピアノでも参加した軽やかな“Hot 'N Cold”を筆頭に、ジェイムズのガラガラに苦い歌声にも楽しげなニューオーリンズ風味が薫ります。
(出嶌)
RINGO STARR
『Goodnight Vienna』 Capitol(1974)
ジョン・レノンの書いた表題曲やプラターズ“Only You”のカヴァーで知られるリンゴ最大のヒット作ですが、忘れちゃいけないのはドクター・ジョンが飄々とピアノを弾いた“Occapella”と“Oo-Wee”。オールドタイミーなNO調が、ほのぼのしたアルバムの雰囲気にもマッチした隠れ名曲です。
(出嶌)
BOZ SCAGGS
『Silk Degrees』 Columbia(1976)
トゥーサンのいなたい名バラード“What Do You Want The Girl To Do”をほぼリアルタイムでカヴァーしたのは意外やAORの帝王。ただ、70年代初頭は泥臭いリズム&ブルースを演ってた人だけに、シルクのシャツに袖を通して紳士を装っても、骨太な魂を失くしたわけじゃないぜ!ってとこか。
(出嶌)
BOB DYLAN
『Oh Mercy』 Columbia(1989)
ダニエル・ラノワの作り出す音像にミスティックなディラン世界が広がる、ディラン久々の傑作として大好評を得たアルバムだが、ニューオーリンズ録音という舞台効果が大きく影響を及ぼしていたことは間違いない。ラノワ絡みでネヴィルズのメンバーも参加、リズム面で新鮮な空気を吹き込んでいる。
(桑原)
LINDA LEWIS
『Legends』 Camden
どの作品がリンダのベストだったかは誰もが知るところだろうが、本特集的に77年の不人気盤『Woman Overboard』(廃盤)を見逃せないのは、絶頂期のトゥーサンが4曲をプロデュースしているから。彼女らしさはさておき、楽曲とアレンジの完成度は流石に高い。現在はこの最新ベストで3曲がチェックできますよ。
(出嶌)
久保田真琴&夕焼け楽団
『セカンドライン』 Better Days/コロムビア(1979)
セカンドラインの魔力に魅せられ、かの街で作られる音楽への憧憬や愛情を表現し続けてきた彼らだったが、改名前の本作では真正面から向き合うことを決意。ニューオーリンズ・スタンダードを散りばめた構成だが、憧憬と愛情が自然と滲み出ているオリジナル曲がどれも最高にいい。
(桑原)
細野晴臣
『泰安洋行』 PANAM/クラウン(1976)
世界各地から不思議な味のする実(リズム)を取り寄せて作った超美味なトロピカルジュースのようなアルバム。その飲み物の味の構成において、ニューオーリンズ音楽は非常に重要な要素となっていた。ドドンパとNOビートの鉢合わせ的冒頭曲などは、この作品でなきゃ出会えない美味さ。
(桑原)
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