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ニューオーリンズ音楽は時代を超えて(3)

難しいことをやってるわけじゃないけど

――じゃあ、ここからはそれぞれのオススメ盤を聴いていきましょう。漣さんのは……コンピ『New Orleans Party Classics』(Time)ですか。

高田「7曲目がイイですね、リバース・ブラス・バンドの“Tipitina”。この間たまたま買ったんですけど、わりとお買い得盤かな。ブラス・バンドっていうとダーティー・ダズン(・ブラス・バンド)が有名だけど、彼らは突然変異じゃないわけで。このコンピは今のモノと古いモノが混ざってる感じですね」

宮原「声が凄いですね。いいなぁ、これ」

たすく「ニューオーリンズにはドクター・ジョンみたいなダミ声の人も多いですよね、サッチモ(ルイ・アームストロング)とか。トム・ウェイツもそっち系かな」

宮原「桑田佳祐もそう(笑)」

高田「それと、ニューオーリンズといえば気の抜けたライヴ。とぼけた感じがあってね」

たすく「気になるタイトルも多かったりする……“Junko Partner”とか(笑)」

宮原「〈淳子のパートナー〉だ(笑)」

――漣さんがいちばん好きなシンガーは?

高田「晩年のプロフェッサー・ロングヘアかな。力が抜けすぎてて、超越してる(笑)。(プロフェッサー・ロングヘア『Crawfish FIesta』のジャケを見ながら)コレ、ザリガニじゃないですか。ニューオーリンズに興味が出たら、食事も素晴らしいのでぜひトライしてほしいですね」

――柳下くんのは、ギャラクティックの『Late For The Future』(Volcano)。

柳下「(聴きながら)……このギターの感じを出すのが難しくって」

高田「ミーターズを聴いていても思うんだけど、向こうのバンドってどのパートもおいしい。みんなが満足できるというか(笑)」

柳下「難しいことをしてるわけじゃないんだけど、単純にフレーズが気持ち良いんですよね」

――このフィーリングを出すのは難しい?

柳下「難しいですね。長年かけないとできないんじゃないかな」

たすく「ヨタってんのか、ミスってんのか、わからんところがカッコええ」

宮原「ホーン・セクションのユニゾンもヨレてるんだけど、そこに人間味が出てる」

高田「いわゆるジャム・バンド系のほとんどは、これまでと全然違うものをやってるように見えたけど、実は凄くルーツ色が強かったじゃないですか。腰を揺らすものが急に盛り上がってきたというか」

宮原「そうそう、そこから聴き方が変わったんですよね」

――じゃあ次は……。

宮原「ダーティー・ダズン・ブラス・バンド『Buck Jump』(Mammoth)を」

たすく「僕らのファーストをこういうジャケットにしたくて、無理言って探してもらった。なんかニューオーリンズの街ってありえへんぐらいカッコ良くって」

高田「街もヨーロッパと両方混ざってる感じだしね」

宮原「こういうブラス・バンドは、歩きながらできるのがカッコイイ。アンプなしでもできるじゃないですか。絶対気持ち良いだろうし、楽しいだろうなぁ」

――そういうのはやってみたい?

宮原「すっげえやりたい(笑)。スーザホーンを吹ける人がいれば。たまらないですね」

――ダーティー・ダズンが出てきたときって〈風変わりなジャズ・バンド〉みたいに見られてませんでしたっけ。

高田「そうそう。ジャズ発祥の地だからね、すべての音楽がジャズみたいなノリ」

――たすく君のは?

たすく「初めてドクター・ジョンを聴いた、『The Ultimate Dr. John』(Warner Bros.)っていうベスト盤。5曲目くらいに凄くいいバラード(“Me-You=Loneliness”)があって、泣きたい時は呑めない酒を呑みながらコレを聴く(笑)。素晴らしい音楽はいろいろあると思うんですけど、少ない音でこれだけ泣かせてくれるのは……ホンマに自分の身から出てきたスピリチュアルな何かをそのまま出した感じがしますね。ニューオーリンズを知らない人でも、これは聴いて泣いてほしい」

宮原「……呑めない酒を呑んでね(笑)」

――ニューオーリンズの音って、喜怒哀楽がはっきりしてますよね。

高田「だから、本気で聴こうと思ったらキリがないんですよね。凄く裾野が広いし、それこそ地元のミュージシャンのなかにもおもしろい人がいっぱいいるだろうから、実際に向こうに行って生で観るのがいちばんなんだよね」

高田 漣

ペダル・スティールを中心にしたマルチ弦楽器奏者。ソロ/客演のほか、Hands of Creationの一員としても活動中で、その温もり溢れる音色が幅広い支持を獲得している。また、先頃KAMA AINA、MOOSE HILLらとの『RAINBOW HAWAII』、マイク眞木とのコラボレーション・アルバム『ROSE』(Tuff Beats)を続けてリリースしたばかり。現在は待望のソロ・アルバムを制作中とのこと。

柳下武史&宮原良太(SPECIAL OTHERS)

即興演奏も交えたメロウなサウンドが話題を集めているSPECIAL OTHERSのメンバー(柳下はギター、宮原はドラムス)。昨年の〈FUJI ROCK〉を沸かせたダイナミックなライヴ・パフォーマンスを武器に、この夏も〈UDO MUSIC FESTIVAL〉をはじめとする各地の野外フェスに出演予定。グンとスケールアップした最新ミニ・アルバム『IDOL』(ビクター)も要チェック!

金宮たすく(cutman-booche)

2002年に大阪で結成された新世代ブルース・トリオのヴォーカリスト。たすくのブルージーな歌声とソウルフルでヒップホップ的なニュアンスにも富んだバンド・アンサンブルが人気を集めており、今夏の〈FUJI ROCK〉にも出演するなど、着実にその活動範囲を拡げている。たすくの切ない歌声が胸を締めつける待望のニュー・シングル“troppin' time”(MIRROR BALL/RD)もリリースされたばかり。

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2006年08月17日 11:00

更新: 2006年08月17日 22:07

ソース: 『bounce』 278号(2006/7/25)

文/大石 始

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