TV ON THE RADIO
ブルックリンを熱くする男たちが、2年ぶりとなる新作をリリース!
ブルックリンから世界へ
2001年にデビューを飾ったストロークスを皮切りに、ヤー・ヤー・ヤーズ、ライアーズ、レディオ4といった新人バンドの同時多発的ブレイクで、NYのロック・シーンがグラグラと煮えたぎっている。〈9.11〉の傷が癒えないなか、その熱気は復興ムードとは関係なく、団結よりも猥雑サイドを歩くところが、まさにNYロッカーズだった。
そんなNYシーンの中心地ともいえるブルックリンで、いま心技体共にもっとも充実しているバンドが、このTVオン・ザ・レディオ(以下TVOTR)だ。このたび届けられたセカンド・アルバム『Return To Cookie Mountain』は、ブルックリンに渦巻くノイズとアートを凝縮したような強烈な一撃である。
「今回はメンバーも増えたし、楽器も増えた。それに、時間もたっぷりかけたしね。俺たち自身もどんな作品になるかわからなかったけど、いろいろと探求してみたかったんだ。だからアルバムのイメージを持ってたとしても違ったものに仕上がっただろうし、仮にあったとしたら〈Purple Rain 2〉といったところかな(笑)」(デヴィッド・シーテック、ギター:以下同)。
TVOTRが結成されたのは2000年のこと。自宅録音にせっせと励んでいたマルチ・プレイヤーのデヴィッドと、ニューヨーク大学映画学科の学生だったトゥンデ・アデビンペ(ヴォーカル)が出会ったことをきっかけに活動を開始させる。そこにキップ・マローン(ヴォーカル/ギター)を加えたトリオ編成で、2004年にファースト・アルバム『Desperate Youth, Bloodthirsty Babes』をリリース。そのアルバムで一気にシーンの最前線に躍り出た彼らに、いち早く注目していたビッグ・アーティストが本作にはゲスト参加している。
「デヴィッド・ボウイはけっこう前から応援してくれているんだ。だからいつもデモテープを送っているんだけど、新作のなかでは“Province”を気に入ってくれた。そこで〈この曲にコーラスで参加してくれないか?〉と声を掛けてみたら、〈もちろん!〉という返事がきたんだよ」。
ボウイのほかにも、マッシヴ・アタックの3Dが彼らを気に入って、新作のプロデュースにデヴィッドを抜擢しているし、ナイン・インチ・ネイルズは今年の全米ツアーにTVOTRを誘った。ほかには、ルーツのクェストラヴも彼らのサポーターのひとりなのだが、TVOTRのエクスペリメンタルな姿勢と、なによりビート/サウンドメイクのユニークさが、多くの人を惹きつけていることはあきらかだ。
「ほとんどのビートはヒップホップのトラックメイクによく使われているMPC2000を使っている。そこに生のドラムを加えているんだ。“Method”では、外に捨ててあったスクラップや廃棄物をスタジオに引っ張ってきて、みんなで叩いたりした」。
そんなふうにTVOTRサウンドの核になるのは、あらゆる音/トーンを重層的に塗り込んだサウンド・プロダクション。ギター・ノイズ、ループ、フルート、ピアノ、サックスなど、さまざまなマテリアルを詰め込んで、ダビーな音響宇宙にペイントしていくのである。
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