WHEW! WHEW!! 口笛の音を求めて……
ガキの頃に聴いたビリーの口笛は、お駄賃を握って菓子を買いに行く時に吹く口笛とはまったく違うものだった。また、ハイキングで景気付けに吹く口笛とも違った。大人になって今日もビリーの真似をしてみるが、上手くいったためしがない。そのたび自分に言い聞かせる、〈あれは詩人の口笛なのだ〉と。目を閉じて、口笛が聴こえる曲を探してみる。
まず出てきたのは、唇を尖らせたニルソンの顔。『Aerial Ballet』の“Little Cowboy”。口笛を吹けば、切なさだけでなく小鳥も寄ってくる。哀愁と朗らかさ、両方を兼ね備えた見事なプレイ。彼はリンゴ・スターのバックでも口笛を披露していた。お次の顔は、ジュエルズ・サンタナ。彼のヒット・チューン“There It Go(The Whistle Song)”の口笛は、駄菓子屋に向かう道、ハイキングの山道を思い出させる響きである。偉大な口笛奏者といえば、忘れちゃならぬ、山下毅雄先生。岩に染み入るような音色が聴ける“大岡越前”は“The Stranger”と兄弟的関係にある曲。彼の口笛は永遠の輝きを持って今夜もビルの谷間にこだましている。
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