耳で聴いたピープル・トゥリー(2)
THE RED HOT CHILLI PEPPERS
『Freaky Styley』 Capitol(1986)
初期のスライが〈パンキッシュなファンク表現〉の源流のひとつだとするならば、彼らはその流れに属することになるのかもしれない。今作ではスライの“If You Want Me To Stay”をスライ直系にあたるジョージ・クリントンのプロデュースでカヴァーし、三代に渡るファンク家系図を描写している。(大石)
ROBERT RANDOLPH & THE FAMILY BAND
『Unclassified』 Warner Bros.(2003)
別掲トリビュート盤では“I Want To Take You Higher”にてスティーヴン・タイラーの放熱に対峙したロバート・ランドルフ。セイクリッド・スティール云々以前に、グラグラ煮えた怒濤のファンクで突進してくる彼のグルーヴは、60年代末期のスライが備えていたポジティヴなゴリ押し感に通じる。バンド名も何気に。(出嶌)
スガシカオ
『SMILE』 AUGUSTA/BMG JAPAN(2003)
スライ『Fresh』のジャケをパロったキャラ・イラストを作ったり、バック・バンドの名前が〈ファミリーシュガー〉だったり、スライ好きとしてあまりにも有名なスガちゃん。本作の冒頭曲“Thank You”のタイトルはスライから拝借した、と本人も証言しております。曲調はプリンス風だけどね。(久保田)
PRINCE
『Sign O' The Times』 Paisley Park/Warner Bros.(1987)
彼がレヴォリューションを結成する際に最初から男女人種混合バンドを狙っていたことはよく知られているし、後にラリー・グラハムを自身のファミリーに迎えてもいることからも何がヒントだったのかはわかりやすい。なかでも表題曲や“The Ballad Of Dorothy Parker”が暴動みたいになってる本作は……。(出嶌)
BECK
『Mellow Gold』 Geffen(1994)
音楽的に躁鬱の癖があるところがスライ的……と言えなくもないが、スライとは真逆のスタンスからファンク×ロック(黒人音楽×白人音楽)にアクセスした点が最大の共通項か。自身のルーツと〈新しもの好き〉という指向性がゴッチャになり、妙なサウンドを作り出しちゃうところも似てる。(大石)
THE TEMPTATIONS
『Cloud Nine』 Motown(1969)
モータウンの敏腕プロデューサーにしてスライの音楽性をいち早く模倣したのがノーマン・ホイットフィールド。彼の手腕は、それまでの清潔なコーラス・グループから猥雑な〈サイケデリック・ソウル〉集団へと転身したこの時期のテンプス作品でもっとも発揮された。スライがソウルの王道さえも変革した証左として。(出嶌)
サンボマスター
『サンボマスターは君に語りかける』 ソニー(2005)
LABCRYの三沢洋紀いわく「鳴った瞬間にそこでただならぬことが起こっていることを感じさせる」のがスライの音楽だと。そこに〈ダメ男っぷり〉という規準を加えれば、現在の日本においてはこのバンドしかないでしょ。スライ〈アフリカは君に語りかける〉と類似するタイトルは偶然でもなかろうに。(久保田)
TONY TONI TONE
『House Of Music』 Mercury(1996)
スライが残したベイエリア流儀のファンク・ヴァイブをもっとも明快に受け継いだのはオークタウン出身の彼らでしょう。本作ではモロに“If You Want Me To Stay”が薫ってくる瞬間もアリ。なお、3人はサントラ『Panther』で“Stand!”をカヴァー、映画本編ではドウェインがスライを演じました。顔は似てないかな。(出嶌)
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