耳で聴いたピープル・トゥリー
スライ&ザ・ファミリー・ストーンをめぐる音楽の果実は、ここに一本のトゥリーを生んだ
ARRESTED DEVELOPMENT
『3 Years, 5 Months & 2 Days In The Life Of...』 Chrysalis(1992)
彼らが登場してきたとき、コミューン的なグループのあり方や、ピースフルな佇まいから初期スライを思い起こした輩は少なくなかった。実際、今作収録の“People Everyday”はスライ“Everyday People”のリメイク。カリスマ然としたこの頃のスピーチの雰囲気には、スライと重なるところも。(大石)
DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN
『MUSICAL FROM CHAOS 2』 コロムビア(2005)
屈折したファンク愛をニヒルな微笑みと共にクラブのフロアへ投下するDCPRG。今作収録の“MIRROR BALLS”に象徴的な濃厚ファンク・チューンには大所帯ならではのゴリ押し感があって、それがまたスライ的だったり。事実、主幹・菊地成孔は『Fresh』を絶賛しているとか。納得。(大石)
THE BLACK EYED PEAS
『Monkey Business』 A&M(2005)
現代を代表する男女人種混合ユニットといえば彼ら。『Bridging The Gap』収録の“Weekends”では“Family Affair”をネタ使用している彼らだが、ボリウッドをテーマにした今作のハミ出し具合もスライから受け継いだもの? 別掲のトリビュート盤ではウィル・アイ・アムが“Dance To The Music”をリミックス。(大石)
小沢健二
『LIFE』 東芝EMI(1994)
昔、付き合いたいと思ってた女の子を家に呼んだとき、カーテンレールの上に粋がってスライ『Life』のアナログ盤をセッティングしたっけ。こっちの狙いどおり「これ、小沢クン?」みたいなことは言ってくんなかったけど。スライも僕も、小沢クンみたいな〈王子様〉キャラに生まれてたら、人生変わってたかもな。(久保田)
JAMIROQUAI
『The Return Of The Space Cowboy』 Work(1994)
やや無邪気さが過ぎつつも真摯なメッセージ性と、JKが振りまいたトリックスター的な胡散臭さで人気を博した初期のジャミロクワイ。タイトルからしてモロなこのセカンド・アルバムは、宇宙ファンクやボッサにも接近しつつ彼らにしては陰性のヴァイブをゆらりと漂わせたスライ味の一枚だった。(出嶌)
MANU CHAO
『Radio Bemba Sound System』 Radio Bemba(2002)
黒人×白人の混成バンドで時代を切り拓いたスライだったが、マヌー・チャオはカリビアンやらアフリカンやらも巻き込んで究極の多国籍バンドを組織。名盤の誉れ高きこのライヴ盤では、その編成を活かして世界各地の〈踊り系音楽〉をガブ呑みしている。その狂乱のパフォーマンスにはスライの血を感じさせるところも。(大石)
BOB MARLEY & THE WAILERS
『Rastaman Vibration』 Tuff Gong/Island(1976)
固く引き締まっていながらモコッとした今作の質感は、『Fresh』あたりとカブるところ大アリ。冷ややかでドス黒いサウンド、そのなかで葛藤しながら言葉を発する2人のカリスマ。両作とも過渡期ゆえの鈍い輝きに包まれているが、ボブはこの後『Exodus』などの傑作でネクスト・レヴェルへ。一方のスライは……。(大石)
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