Introduction With OMAR(2)
UKソウルらしい上質な明快さ
過去には元スティーヴィー夫人でもある故シリータとの共演も実現させていたオマー。素晴らしい女性シンガーとの共演も多い彼だが、今回はアンジー・ストーンとも2曲でデュエットしている。アンジーとはウィリアム・ディヴォーン“Be Thankful For What You've Got”のカヴァーを以前いっしょに歌った仲だ。
「アンジーと初めて会ったのは、ちょうど『Best By Far』のレコーディングをしている最中だった。彼女のほうから僕に会いたいって電話をかけてきたんだ。“Be Thankful”はエリカ・バドゥとのヴァージョンもあるけど、エリカのレーベルから許可が下りなかった時の予備としてアンジーに歌ってもらったんだよね。今回も新作の制作中にアンジーがロンドンにいて、スタジオに遊びにきてくれたんだけど、その時に聴いてもらったトラックのうち2曲をアンジーが凄く気に入って……彼女って凄いエネルギッシュな人だから、ほとんど勝手にブースに入って歌い始めちゃったんだ(笑)」。
アンジーだけではない。今回、“Gimme Sum”に客演しているコモンもオマーの熱烈な支持者で、コモンとの繋がりで他曲にはピノ・パラディーノも参加している。一方のUK勢も、旧知の仲でご近所さんだというドニー(彼の最新作にはオマーも参加)をはじめ、IGカルチャー、一昨年のMOBOアワーズで新人賞を獲った新鋭エステルらが参加し、密度の高いコラボレートが実現している。
「コモンはエリカ・バドゥが仲介役でね、彼が『Electric Circus』を作る時に僕と仕事がしたいってNYに呼ばれたんだ。その時に次は僕のアルバムにぜひ参加したいと言われた。エステルはローリン・ヒルみたいなタイプで、ラップもするし歌も上手だし、仕事も速くて完璧な仕事をしてくれたよ。今後はビル・ウィザーズやボビー・ウォマックのようなオールド・スクールのアイコンを探し出して、いっしょに仕事をしてみたいなぁ」。
好奇心の赴くがまま音楽をやるオマー。新作のタイトルにも特に深い意味はないという。
「これまでタイトルにメッセージ性を込めたことは一度もないんだ。曲名をリストにした時にベストだったものを選んだだけ。僕はそんな深い人間じゃないよ(笑)」。
音楽的にも極めて高度なことをやっているオマーだが、決して難しいとは思わせず、どこまでも明快。それはまたUKソウル全体に言えることであったりもするのだ。