こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

特集

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2005年11月10日 16:00

更新: 2005年11月10日 18:19

ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)

文/川埜 英彦

新しいクールの誕生


  昨年リリースされたシングル“Hard Twelve -The Ante”が日本でも話題となり、UKではジャイルズ・ピーターソンやパトリック・フォージがプレイ。さらに1MC+ビッグバンド形態のライヴ・パフォーマンスは地元パリで大評判に。そして当の本人はアトランタのアンダーグラウンド・シーン出身……このようにユニークかつクロスオーヴァーなスタンスで話題なのがビート・アサイラント(以下BA)だ。

「俺はラフェイスのティム&テッドといっしょにスタジオに出入りしていて、他のアーティストやプレイヤーに出会えた。その頃にした多くの経験が、俺を曲がり道の先へ押し出してくれたと思うよ。当時からハイスクールで音楽を作っている他の奴らよりも一歩先にいると感じていたもんさ」。

  77年にマイアミで生まれ、アトランタで成長した彼は、アウトキャストらより少し下の世代。ただ、これから何かが始まろうとするシーンの気配を感じ取っていたのだろう。ダラス・オースティンのレーベル=ラウディが主宰するオープン・マイクのMCバトルでスキルを磨いたという。BAいわく「ラウディ・ストアが閉まった後に催されていたんだ。ソウル・メサイアがDJだった。有名なヤツから契約のないヤツまで、あらゆる種類のMCたちがそこに出ていたよ」とのことだ。こういうクリエイティヴな環境の元で育まれたBAの音楽性は、大学進学後の2000年に初めて訪れたというパリで大きく開花する。パリのシーンに刺激を感じた彼はブラックジャックやMCソラーら現地のアーティストと交流を深め、やがてはパリに拠点を移すに至った。前後してプロダクション・パートナーのザッシュ(コンポスト人脈のプロデューサー)とも出会って、着々と地固めを進めていった。そうやって生み落とされたのが先述のシングルであり、今回のファースト・アルバム『Hard Twelve』というわけだ。

 ピアノやホーンのニュアンスに富んだ響きが暗闇の底から浮き上がってくるような全体のスタイリッシュなムードは彼の佇まいが表現するそのまま。いわゆるジャジー系ヒップホップももはや変わり映えしなくなってきた昨今ではあるが、BAの音楽には、そこに通じる鮮烈なジャジー・グルーヴと同時に、それ以上の懐の深さと、耳をそばだてさせる独特の芳醇なヴァイブが活き活きと脈打っている。この美しい陰影に富んだ世界観にぜひとも触れていただきたい。

インタビュー