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特集

カテゴリ : フィーチャー

掲載: 2005年11月04日 13:00

更新: 2005年11月04日 17:29

ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)

文/村尾 泰郎

カナダの未来は彼らにおまかせ!


「さあ、パンク・ロック・ショウのはじまりだぜ!」。

 今年行われた〈サマソニ〉のステージで、アーケイド・ファイアはいきなりそう宣言した。で、ライヴはそのとおりの凄まじい展開。アコーディオンが弾き鳴らされ、ギターは痙攣し、ストリングスはスウィング。その横をスティックでシンバル叩きながら走り回る(しまいにスティックを折る)──総勢8名のメンバーがオーディエンス以上にハシャギまわるという、とんでもなく楽しいライヴとなった。

 現在、じわじわと加熱するカナディアン・オルタネイティヴ・シーン。トロントを代表するのがブロークン・ソーシャル・シーンなら、モントリオールの顔役は彼ら、アーケイド・ファイアだといって間違いない。バンドの核となるのは、大学進学のためにテキサスからカナダにやってきたウィン・バトラー(ヴォーカル/ギター)。そこで彼はハイチ系カナダ人のシンガー、レジーヌ・シャサーヌと出会ってバンド結成を決意。弟のウィリアム(シンセサイザー)を引き入れて前身となるバンド、アーケイド・ファイア:MKIをスタートさせる。

  現在のメンバーはその3人に加えて、リチャード・パリー(ギターほか)、ティム・キングスベリー(ベース/ギター)、ジェレミー・ギャラ(ドラムス/パーカッション)、サラ・ニューフェルド(ヴァイオリン)。ただし、あくまでこれは〈基本メンバー〉であり、ライヴやレコーディングによってはさらにメンバーが加わり、パートも固定していない。まるで音楽的コミューンのような彼らのスタイルは、2004年に本国でリリースされたファースト・アルバム『Funeral』にて完成された。

 シャープなカッティングで刻んでいくギター、オーケストラルな拡がりを持ったアレンジ、そして、アコーディオンやヴァイオリンの音色が誘うトラッドな味わい。ポーグスを思わせる旅芸人的な哀愁もあれば、ニュー・オーダーやピクシーズを好んで聴いていたというウィルの好みが反映されたモダンさもある。しかし、なにより楽曲を貫くエモーションはパンクそのものだ。唯一無二なそのサウンドは、カナダからアメリカ、そしてUKに飛び火して、カナディアン・ロックの旗手としての彼らの評価を決定づけた。同じくモントリオールのグループ、ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーとも交流がある彼ら。共に豊かな物語性を持ちながらも、今作にある胸を掻きむしるようなメランコリアは、僕らがまだ知らない、カナダの荒々しくも美しい風景を見せてくれる。

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介

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