Franz Ferdinand
昨年度の覇者は今シーズンも大爆発してくれるのか? 荒々しさを増した新作を携えて、王者としての圧倒的な強さを見せつける!
僕らはライヴ・バンドなんだ!
ここ数年ほど、未曾有のUK新人ブームが続いている。ことに、まさかのニューウェイヴ・リヴァヴァルで右を向いても左を向いても、プリント・シャツなどにピタピタのパンツを合わせるモードなバンドたちが続出中。その立役者といえば、なんといってもフランツ・フェルディナンド! 2003年のデビューからスタートしたその快進撃は、2004年のファースト・アルバム『Franz Ferdinand』の世界的な大ヒットにはじまり、UKの賞レースの中でもっとも実力と新しさが重要視されるという〈マーキュリー音楽賞〉を受賞するなど、他の追随を許さぬシーンひとり勝ち状態だったのはいまだ記憶に新しい。
そんな彼らがなにより正しかったのは、止まることを知らぬ周囲の盛り上がりからサクッと身を引いて、セカンド・アルバム『You Could Have It So Much Better』のレコーディングに入ったことだろう。というのも、ファースト・アルバムで爆発的に人気が出た結果、何年も続く世界ツアーに疲弊してアルバム制作のためのモチベーションや制作意欲を復活させるために時間がかかるバンドが数多いのも実情。フランツの判断は正しかった。なにしろこのセカンド・アルバムを聴けば、前作からの駆け足をまったく緩めることのない4人の姿と、ライヴ感のある録音などでより強大になったエネルギーをすぐさま確認することができるからである。
「いま、ホントに気分は最高さ! ファンのみんなに早く聴いてもらいたいし、コンサートでもガンガン演奏して、多くの人に聴いてもらいたい。待ちきれないよ!」(ボビー・ハーディ、ベース:以下ボブ)。
「うん、とても良いアルバムが出来上がったという点で、全員の意見が一致してるよ。満足いく仕上がりになったからこそ、聴いてくれるみんながどんな反応をするのか楽しみだね」(ニコラス・マッカーシー、ギター:以下ニック)。
アルバムが完成した興奮を、隠すことなく伝えてくれたボブとニック。そもそも〈フロアにいる女の子を気持ち良く踊らせたい〉というモチベーションでスタートしたフランツといえば、徹底的にポップでダンサブルで、陽性の笑顔が似合うリズムが特徴。今作でもそういう側面はしっかり保ちつつ、まさかのアコースティック・バラードに挑戦してみたり、切ない泣きメロをアグレッシヴなダンス・チューンにしてみたりと、よりさまざまな表情が見えてきた。
「(新作は)基本的にはファースト・アルバムと同じように、僕らのバンドの要素を感じてもらえると思う。けれど、今回はもっといろんなタイプやジャンルの曲調を通じて、それを見てもらえるはずだよ。つまり、僕らはいろんな感情を表現できるバンドになりたいんだ。悲劇的な内容の曲にも、ダンサブルなリズムをつけたいんだよね」(ボブ)。
「だから、デビュー作より親近感を感じてもらえると思うな」(ニック)。
「曲のタイプもさまざまで、幅広いしね」(ボブ)。
「アップテンポの楽しい曲もあれば、スロウで悲しい曲もある。人生と同じさ」(ニック)。
そういったさまざまな試みをギュッとひとつにまとめているものは、今作の場合ライヴ感を活かした録音だろう。前作は全体にエフェクトがかかり、ポップ感のある〈パッケージ〉を意識したかのようなアレンジだったが、今回はより彼らのライヴに近い情熱がまっすぐに響いてくる。
「まさに、それが狙いだったんだよ! なにしろ、ライヴに来てくれたファンから〈フランツ・フェルディナンドのライヴってすごいんだね! アルバムよりずっとエネルギーに満ちてるし〉って、よく言われてて。だから、新作ではこのライヴ感を前面に出そうと思ったんだ」(ニック)。
「それにデビュー作をリリースして以来、ライヴに次ぐライヴだったから。おかげで〈僕らはライヴ・バンドなんだ!〉っていう自覚も出てきた。前作をリリースしてから350回以上もライヴをしてるから、僕らはもう、押しも押されもせぬライヴ・バンドなんだ!」(ボブ)。
「だからこの新作は、フランツ・フェルディナンドのツアーの様子を疑似体験できるアルバムと言えるかもね」(ニック)。
「〈フランツ・フェルディナンドの悲喜こもごもな一日〉って感じかな」(ボブ)。
ライヴを重ねたことが、自分たちの演奏力に対する自信にも繋がったのは想像に難くない。結果として実際に〈やれること〉の幅が広がったことは、楽曲のポップなインパクト以上のものをもたらすサウンドとして表現力に現われている。
「レコーディングも4人全員がスタジオに入って、ジャム・セッションというかたちで行ったんだよ。お互いにいろんなフレーズやビートを試していくなかで、一瞬の閃きからキメのフレーズやリズムが生まれるんだ。このドキドキする瞬間を、ニュー・アルバムには収めたんだよ」(ニック)。