耳で聴いたピープル・トゥリー(2)
STEELY DAN
『The Royal Scum』 MCA(1976)
ボビーの“You Promised Me”が本作収録の“Haitian Divorce”を元にしていることはボビー自身も認めているとおり。また、彼らの金字塔『Aja』のアートワークが『Cat In The Hat』の裏ジャケにてオマージュを捧げられるなど、ボビーには相当影響を与えた様子。緻密なサウンドメイクにももちろん通じる部分は大きい。(鶴田)
AVERAGE WHITE BAND
『Shine』 Arista(1980)
ソウルを透過して広がるポップな世界をさまざまな音楽的語彙で織り上げるデヴィッド・フォスター。そんな彼のプロデュース・マジックによって足枷を外されたのが、本作前後のアヴェレイジ・ホワイト・バンド。力みの消えた彼らの音楽性にはミュージシャン/歌い手としての心理に中期ボビーとの共通性が見える。(JAM)
ROBERTA FLACK
『I'm The One』 Atlantic(1982)
ボビーのソウルに対する熱い思いは、わかってらっしゃる人には当然伝わるわけで、彼が書き下ろした“Never Loved Before”を本作で歌ったロバータ・フラックはその代表的なひとり。経緯は不明ながら、違和感なく両者の緊密さが覗く抜群の一曲である。なお、ボビーは新作で彼女の“Where Is The Love”をカヴァー。(JAM)
BEE GEES
『Main Course』 Polydor(1975)
一貫してブルーアイド・ソウル的なフィーリングの強いグループだが、アリフ・マーディンをプロデューサーに迎えてリリースした本盤は、ディスコに執心しはじめる70年代後期の作品よりもソウル純度が高い。彼らがソウルの何に突き動かされていたのか、ボビーに一脈通じる原初的な解答もここに見い出せる。(JAM)
KOOL & THE GANG
『Emergency』 Polygram(1984)
ジェイムズ“JT”テイラーをリードに据え、デオダートの助力を得て以降の彼らは、ポップなファンク~ブラコンの旗手としてメインストリーム・シーンでAORを猛追するのだが、AOR風の激甘バラード“Cherish”を収めた本作こそ、逆転の瞬間だった。後のJTのソロ作にはボビーが“Promised Land”を提供している。(出嶌)
GREAT3
『Richmondo High』 東芝EMI(1994)
で、続いては“FOOL & THE GANG”。70年代のアメリカン・ロックを基調に、メロウな純情を滲ませる彼ら。濡れた美メロを乾いたムードでラッピングするやり口はボビーさながらの職人技だ。含蓄があるけど耳触りはストレートな、こういうポップ・ミュージックって日本からどんどんなくなってますね。(出嶌)
坂本 九
『ゴールデン・ベスト』 東芝EMI
日本人で唯一全米チャートを制覇した“Sukiyaki”(“上を向いて歩こう”)で世界的に知られる九ちゃん。彼が不幸な事故でこの世を去ってから20年……期せずしてボビーから届けられたのは、オリジナルの英詞を原曲に忠実なアレンジで披露したカヴァー“Sukiyaki(Forever)”。こうして歌は生き続けていくのだ。(出嶌)
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