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特集

ボビーのさまざまな音楽嗜好、そして真の〈AOR〉とは!? ALBUM ORIENTED ROCK

カテゴリ : ピープルツリー

掲載: 2005年09月15日 14:00

更新: 2005年09月15日 18:44

ソース: 『bounce』 268号(2005/8/25)

文/出嶌 孝次

 そもそも本国USにおけるAOR(Album Oriented Rock/Radio)とは固有の音楽カテゴリーを指すものではなく、あくまでもラジオ・フォーマットにすぎない。実は日本で言うところの〈AOR〉とはその一側面を限定解釈したものなのだが、本稿はその是非を問うものではない。ただ、リアルAOR(?)を〈シングル・ヒットではなく、実験性や横断性を帯びつつアルバム内で披露された多面的なロック・ソング〉というふうに認識できれば、そこにもっと多彩な音楽的滋養が隠されていたことはおのずとわかるだろう。そして、ボビーはそういう意味でも〈AOR〉の代表的なアーティストなのだ。

 マイアミに移り住んだ彼がカリビアン音楽に親しんでいたことはよく知られており、例えば初作の『Bobby Caldwell』でもカリンバを操った粋な小品“Kalimba Song”でトロピカルな響きを楽しめる。また、敬愛するボブ・マーリーの死に際して作った“Jamaica”があえてソカ風のアレンジで披露されているのも、レゲエの流行に便乗しただけじゃないボビーの意志が見える例だ。彼のレゲエ曲だと“Class Of 69”が思い浮かぶが、同じ『August Moon』に収録された“Sherry”も含め、フックで倍速になる作りはポリスからアイデアを借用したと思われる。80年代序盤までのボビーは、タワー・オブ・パワーやTOTOを従え、スティーリー・ダンやジョージ・ベンソンの影響をスマートかつ無邪気に採り入れるなど、まさに〈AOR〉的なミクスチャーぶりを見せていた。

 その後はオールド・ソウル趣味を随時披露しながら、グルーヴよりも自身の歌唱に磨きを掛けていくことになる彼だが、90年代にはジャズ~スタンダード路線に強く傾倒し、アイドルだったというフランク・シナトラに捧げた『Come Rain Or Come Shine』へと帰結している。とはいえ、そうした諸要素が混在するのではなく、ブレンドされた形で自己の音楽性に投影されているのがボビー・コールドウェルだ。フィル・ペリーのスムージーなボッサ“Perfect Island”をカムバック・アルバムの表題曲に選んだことは決して偶然じゃない。

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介

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