DUBSENSEMANIA
自由な音楽のあり方を提示する新作『VERSATILITY』が伝えるもの
RAS TAKASHI
「今、タイ・カレー食べてまーす」なんて、取材を行ったカフェで茶目っ気たっぷりにテープレコーダーに向かって話すRAS TAKASHI。メジャー進出を果たし、ここ1年タイトなリリース・スケジュールをこなしているので、少しピリピリしているのでは?と思っていたのだが、ものすごく自然体。そのリラックスした空気感はどこからきているのだろうか? 彼の日常に潜むキーワードを探った。
「cafe8に来たことあるの? あのスムージー、俺がNYで仕事していたところで覚えてきて。(カフェの)立ち上げのシェフは俺ですからね。あそこのレシピ、俺がほとんど作ったんだ。……それで、スタッフがいないからダブセンの仲間を呼んで働いてもらったりしてた。ファミリー・ビジネスっぽく、バンドとレストランといっしょに、みたいな」。
TAKASHIが働いていたcafe 8(南青山にあったカフェ)のスムージーの話をすると、彼はそんな逸話を聞かせてくれた。公私共に波長の合うメンバーと音楽を続けてきて早6年。DUBSENSEMANIAのメンバーはTAKASHIにとってどんな存在なのだろうか?
「家族って感じになってきますよね、やっぱり。バンドをやってると、いいところも悪いところも全部見えてくるし、隠しごともできなくなってくるじゃないですか? 彼女がどうだとか。今は結構みんな家族とかいるんだけど、バンド・メンバーの子供たちはもう自分の子供くらいに思ってるし。ホント、ワン・ファミリーな感じで」。
このたびリリースされたセカンド・アルバム『VERSATILITY』では従来のダブ・サウンドを基軸にしながらラヴァーズもルーツも肩肘を張らずに溶け合っており、ポップスという視点に立ってみても傑作といえる内容。こういった方向性の変化は自然な流れだったのだろうか?
「そうですね。でも、根底にあるものは変わってないんですよ、1枚目から。60~70年代のレゲエ・アーティストっていうのは、ある意味新しいことをやってたわけじゃないですか? ジャズとかブルースとかソウルとか、そういうものを全部吸収してレゲエっていうものを発信したわけで。だから、カヴァーやコピーで終わりたくないんですよ。レゲエの枠のなかだけで収まりたくないというか。それこそ、新しいジャンルの確立、そういうものをめざしてるんで。そこはもう動かないコンセプトなんですよ。レゲエのルーツをベースに持ちつつ、新しいトライをしていこうってのが、みんなの共通イメージ」。
では、このメンバーだからこそできることとは?
「やっぱりいちばんは、ヒューマン・グルーヴじゃないですか? セッションでは得られないことが、長くやってるバンドにはある。それに尽きますね。あと、ヒューマン・グルーヴは暖めるのに時間がかかるっていうこともあるんで、(このメンバーで)行けるトコまで行きたいですね。神のみぞ知るって感じだと思うけど、俺の気持ちのなかでは、前進あるのみ。来年の目標は海外進出なんで、ヨーロッパとかのフェスにも出たいですね」。
言葉の通じない異国の地でこそ、彼らの暖かく、そして力強い絆=ヴァイブスは輝きを放つだろう。想像するだけでも胸が熱くなる。
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