SPROUT(2)
僕はスケートでしっかり教育された人間だ
こうして唯一無二の、サーファー以外の人間にも強く訴えることのできる作品を作り上げたトーマスだが、そのポイントは自分自身がスケーター上がりということが大きいらしい。キャリアを「トランスワールド」というスケート誌でのエディター/カメラマンからスタートしたトーマスは、ことあるごとに自身がスケーターであることを発言している。
「僕はスケートでしっかり教育された人間だ。もちろんサーファーでもあるけど、サーフ・カルチャーとの関わりよりも、遙かにスケート・カルチャーとの関わりのほうが深いよ。スケートはアウトローのカルチャーで〈Do It Yourself〉、つまりルールなんてないんだ。スケートほど総合的でクリエイティヴなカルチャーっていうのはちょっと他にないと思うよ。写真、映像、グラフィック、もちろん音楽も、ありとあらゆるスタイルと人が集まってスケート・カルチャーを作り上げているんだ。〈スプラウト〉も僕がスケート・カルチャー出身の人間だから出来たものだよ。最初にフィルムを作ることになったとき、僕が作りたかったのは80年代に人気のあったエレン・ヴォン・アンワースの写真と、60年代のサーフ・フォトグラファー、リロイ・グラニスの写真、そんな感じの映像だった。もし僕がスケート出身じゃなかったら、そんな知識を持つなんてありえなかったはずさ。スケート雑誌には(ジャン=ミシェル・)バスキアからブラック・フラッグ、(ジョン・)コルトレーンからスレイヤーが並列で出てくるんだ(笑)。そんな状況なんてスケート以外考えられないだろう?」。
スケーター出身のアーティストらしく、自分がいいと思うものをフラットに捉え、表現するトーマス。ただユルい、メロウという言葉ですべてが括られがちな最近のサーフィン・ブーム、その中心人物のひとりに数えられるトーマスの映像と音楽は、パンクにジャズ、ロック、そのすべてを通過したうえで生まれたメロウネスだということを理解したい。
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