映像と音楽のかつてない融合──映画「スプラウト」の魅力とは?
サーフ・ミュージックの定義なんて……
巷を騒がすサーフ・ムーヴィー「スプラウト」。そのレイドバックした映像と音楽、特にジャック・ジョンソンやトミー・ゲレロ、マニー・マークが参加したスプラウト・ハウス・バンドの存在が人々の注目を集めている。確かにものすごいメンツというか、サーファーのみならず一般層にも大人気のジャック・ジョンソンが参加しているということで、そこにのみ焦点が当てられがちだが、そもそも監督のトーマス・キャンベルは自身のレーベル、ギャラクシアを運営する生粋のミュージック・フリーク。劇中で使われた音楽のセレクトにしても確固たるこだわりがある。彼にとってのサーフ・ムーヴィー第1作目「The Seedling」ではトータスやアイソトープ217といったバンドの音を、自身が好きだったという60~70年代のナレーション付きサーフ・ムーヴィーにオマージュを捧げた16mmのモノクロ映像に合わせ、独自のカラーを作り上げた。
「僕は音楽ならなんでも聴くけど、いわゆるポスト・ロックと呼ばれるものが好きなのは確かだよ。スリル・ジョッキーやドラッグ・シティといったシカゴ系のレーベルとは、自分がもっとも好きなレーベルとしてだけではなく、ギャラクシアでもよくコラボしたりしている。カブっているバンドも多いしね。そういった音をサーフ・ムーヴィーに使って、びっくりする人もいるんだろうね、〈自分たちが知ってるサーフ・ミュージックじゃない〉って。でも、サーフ・ミュージックっていったいなんなんだろうね。定義なんてないだろう? 例えば昔言われていたサーフ・ミュージックっていうものは、実際のサーファーにはまったく聴かれていなかった。本当のサーファーはリズム&ブルースやジャズを聴いていたんだ。もちろん(ジミ・)ヘンドリックスとかも聴いていたけどね(笑)。とにかくサーフィンのフィーリングを感じさせてくれる音楽がサーフ・ミュージックなんだと思う」。
そうやって出来上がった映像とサウンドスケープは、確かに完全にシンクロし、トーマスが伝えたかったという「サーフィンができることの喜び」に満ち溢れた、一級品のロード・ムーヴィーに仕上がっている。
「この映画に使われている音楽は、もともと僕が好きで毎日聴いていたもののなかから30曲を選んだんだ。それからそのなかで一定のリズムがある、方向性のあるものを選んだ。例えばヒムの曲は、過去5年間のなかでもいちばん好きなものだ。自分の映画のなかで使えればなぁって夢見てたんだけど、それがこうして叶ったんだから僕はラッキーだよ(笑)。それ以外にもホープ・サンドヴァルやボニー“プリンス”ビリー、サム・プレコップも使うことができたし、オリジナルとしてスプラウト・ハウス・バンドも実現できたんだからね。マリオ(・カルダートJr)のスタジオでみんながいっしょになる機会が持てて本当にラッキーだった」。
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