マイルス・デイヴィスと彼のグループの卒業生たちが開拓していった音楽は〈クロスオーヴァー〉や〈フュージョン〉と呼ばれ、その名が示すとおりジャズ、ロック、ファンクが〈交差〉〈融合〉され採り入れられていた。その手法は第2期JBGやBBAを経たジェフ・ベックの指向と共通するところが多く、『Blow By Blow』以降へと繋がっていくのであった。ジョン・マクラフリンのギター、ビリー・コブハム作品に溢れるインタープレイはジェフのインプロヴィゼーションに強い霊感を与えたし、マックス・ミドルトンのクラヴィネットやエレピはハービー・ハンコックやチック・コリアのそれらを彷彿とさせ、新たなグルーヴと洗練された響きを生み、ジェフのフィールドを広げたのである。
MAHAVISHNU ORCHESTRA
後にジェフと共演することになるナラダ・マイケル・ウォルデンとヤン・ハマーが在籍していた、70年結成のグループ。リーダーのジョン・マクラフリンが、マイルス・デイヴィスのグループで受けた刺激をインド思想のフィルターに通して生まれたサウンドはジェフに多大な影響を与えた。
JAN HAMMER
『Wired』がハードながらも浮遊感に溢れているのは彼のシンセサイザーによるところが大きい。まるでギターのように弾くスタイルでジェフとバトルする様子はライヴ・アルバムにも収められている。ジェフの攻撃的なスタイルのギターは遠慮ナシである。
STANLEY CLARKE
チック・コリア率いるリターン・トゥー・フォーエヴァーの元ベーシスト。彼のセカンド・アルバムにジェフは2曲で参加し、そのうちの1曲はズバリ“Hello Jeff”。互いの音楽に刺激を受け、その後のツアーにジェフは同行し、共に来日も果たしている。
JOHN MCLAUGHLIN
BBAに行き詰まりを感じていたジェフにヒントを与えたマハヴィシュヌ・オーケストラの中心人物。ジョン・コルトレーンを思わせる知的なフレージングとロックのパッションを兼ね備えた技巧派ギタリストで、75年にはジェフとジョイントでライヴも行っている。
NARADA MICHAEL WALDEN
ナラダ・マイケル・ウォルデンの76年作『Garden Of The Love Lights』(Atlantic)
現在はポップス/R&B系のプロデューサーとして著名な彼だが、もともとは腕利きセッション・ドラマー。ジェフの『Wired』の4曲は彼のペンによるものであり、饒舌なドラミングと共に、アルバムへの貢献度は高い。
TIM BOGERT & CARMINE APPICE
ジェフがヴァニラ・ファッジのレコードを耳にし、聴き惚れたリズム・セクションがこの2人であった。トリオ結成は遅れてしまったがライヴ盤での演奏はジェフのプレイの中でも群を抜いてハードであり、BBA時代をジェフのフェイヴァリットに挙げる人も少なくない。
ロッド・スチュワートとの15年ぶりの共演や、若かりし日に時間を共にしたであろうミック・ジャガーとのコラボレート、またかつてのメンバーであるコージー・パウエルのソロ作やロン・ウッドとジョイントで久々の共演を行ったりと、80~90年代のジェフは旧友とのセッションでも腕を振るった。
ROD STEWART
第1期JBGのヴォーカリスト。ハスキーでソウルフルな彼のヴォーカルとジェフのギターは相性抜群。ジェフの作品にはインストものが多いが、それはロッド以上に息の合うヴォーカリストがいなかったからだともいわれている。それほどまでに2人の息はピッタリと合っている。
MICK JAGGER
ミック・ジャガーの87年作『Primitive Cool』(Columbia)
言わずと知れたローリング・ストーンズのヴォーカリスト。ジェフは一時ストーンズに誘われたこともあり、その流れかミックのソロ・アルバム2作に参加している。特に『Primitive Cool』はジェフのセッション作品中、唯一の全曲参加作品である。