レゲエとロックステディに根差したもの
「熱い想いを激しい音に乗せてやるのは簡単なんですよ。わかりやすいから。でも、そういう熱くて激しい感情を緩い音楽に託してやるってのは凄く難しい。そこに惹かれるんですよね」(森下、ギター)。
2本のホーンとペダルスティール・ギターが織り成す、叙情的でいてクールな佇まいのなかに、エッセンスとしてダブやレゲエの要素を採り入れるスタイルだった彼らが、レゲエやロックステディに真摯に向き合い、スタジオでの息遣いや笑い声までもが聴こえてきそうな、熱くもあり、それでいて極上リラクシンな7インチ・シングル“GREEN TO GOLD”で本格的な復活の狼煙を上げた。しかしながら、約3年という長い沈黙や、バンドの舵を新たな方向へと切った真意はどこにあるのだろうか?
「2枚目のアルバム『smokey branch』が出たとき、あまりにもこう、とっ散らかりすぎたというか、みんなが別々の方向を向いちゃってたんで、もう解散かなって話をした後に、一度リーダー(森下)がみんなに召集をかけて。〈ちゃんとレゲエとロックステディに根差したものを最初からもう1回やっていきたいんだけど、やりたい人は集まってくれ〉みたいなことを言って。で、みんなが集まってきてコイツ泣いちゃったんだよ(笑)」(岩瀬、ベース)。
「泣いてねーよ(笑)! ……音楽って、こっちのジャンルから向こうのジャンルを見ると、全然違う見え方ができたりするじゃないですか? いままでレゲエとか自分の中に入ってなかったからこそ、レゲエが自分の中で立体的にイメージできて。〈こうしたらおもしろいんじゃないか?〉っていう。盲目的に好きになってるっていうよりは、自分たちを表現する手法として、いまはレゲエが合っているのかなって」(森下)。
今回のミニ・アルバム『RUNNIN' AWA-Y』に収録された楽曲は、昨年夏から今年の頭にかけてリリースされ即完となっていた、KING NABE(the BOLDIES/CLUB SKA)、サイトウジュン(YOUR SONG IS GOOD)、KC & RIE(riddim saunter)をフィーチャーした7インチと、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの名曲をデニス・ブラウンのリメイク・トラックに乗せ、CHEEのキュートな歌声で料理してしまった問題作(にして今作の表題曲)、この2枚の7インチを中心に構成されているわけだが、彼らのように既存のフォーマットに新しい解釈を加えて、オリジナルなものを創造していこうという気概のある人たちをゲストに選んだのも、〈新しい何か〉を模索しているFRISCO自身と何らかのシンクロ感があったからかもしれない。
「いまはダンスホールが主流だけど、レゲエとかロックステディっていうフォーマットでもっと新しいおもしろいことができるんじゃないかっていう意識がすごいあって。いま、周りを見ても新しいスタイルっていうのが芽生えはじめている状況があって、それがすごくおもしろくって。俄然やる気になるっていうか」(森下)。
秋口にリリースされる予定の、新生FRISCOの全容があきらかになるであろうフル・アルバムも、いまから楽しみだ。
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